2011 Fiscal Year Annual Research Report
生物の体制進化に伴う繊毛構造の多様化とその分子機構
Project/Area Number |
22370023
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
稲葉 一男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80221779)
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Keywords | 鞭毛 / 繊毛 / 軸糸 / ダイニン / 精子運動 / 進化 / 海産無脊椎生物 / 精子形成 |
Research Abstract |
真核生物の繊毛は、細胞の運動やシグナルの受容に関わる重要な細胞構造であり、進化を通して高度に保存されている。本研究では、申請者がこれまで培ってきた繊毛構造・機能に関する知識、解析技術を駆使し、生物の体制進化に伴う繊毛構造の多様化と、その分子メカニズムの解明を目指して研究を進めた。まず、ウニ胚に存在する頂毛のプロテオミクス解析を進め、これまで同定したグルタチオンS-トランスフェラーゼ以外に複数の頂毛特異的タンパク質を同定し、それらの機能解析に着手した。モルフォリノオリゴを用いたノックダウン実験により、グルタチオンS-トランスフェラーゼが胚の繊毛運動を制御し、胚遊泳の方向制御に携わっていることを明らかにした。また、ホヤ精子鞭毛のプロテオミクスを行い、結果を精子、精巣、各鞭毛分画、鰓繊毛のプロテオミクス解析結果と比較した。その結果、鞭毛に特異的なタンパク質を複数決定したとともに、細胞骨格成分であるチューブリンやアクチンのアイソフォームが鞭毛と繊毛で全く異なることを発見した。一方、マガキガイの異型精子を用いた研究では、鞭毛内輸送(IFT)を介さずに軸糸が形成されることを形態学的に明らかにした。ホヤの精子形成においてもIFT非依存的に軸糸形成が行われることを示唆する結果を得た。これらの結果は、IFTに依存して繊毛軸糸が形成されるという従来の考えを覆すもので、実際に関与している分子の特定が今後重要である。また、ホヤ胚における繊毛についても研究を進め、ダイニンは存在しないが、その調節構造であるラジアルスポークや中心対が痕跡的に存在することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウニ幼生の頂毛に特異的に存在するタンパク質の同定、マガキガイ異型精子形成における軸糸分布、ホヤ精子形成における軸糸形成機構において一定の研究成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本年度の研究成果を完成させ、論文として公表する。ミズカビ遊走子については研究が遅れており、平成24年度では集中的に研究を進める予定である。
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Research Products
(14 results)