2011 Fiscal Year Annual Research Report
ハイマツ・キタゴヨウ交雑帯に働く自然淘汰の連鎖地図ベースでの解析
Project/Area Number |
22370030
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
綿野 泰行 千葉大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70192820)
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Keywords | 連鎖地図 / 自然淘汰 / 浸透性交雑 / ハイマツ / キタゴヨウ / 交雑帯 / 遺伝子浸透 |
Research Abstract |
本研究では、連鎖地図ベースで、ハイマツとキタゴヨウの交雑帯における遺伝子浸透のパターンから、交雑帯に働く自然淘汰を検出することを目的とする。ベースとなる連鎖地図は、ハイマツとキタゴヨウのF1雑種と推定される個体から採集した種子を利用して主にAFLPとESTマーカーを用いて作成されている。 本年度は、八甲田山と谷川岳の2つの交雑帯について、連鎖地図上のマーカーのうちESTマーカー28個、SSRマーカー2個を用いて遺伝子型を決定し、ソフトウェアSTRUCTUREのlinkage modelによって分子交雑指数(MHI)を推定した。次に、中立であった場合に予測される遺伝子頻度の"ばらつき"をMHIデータを基にランダムサンプリングによって経験的に求めた。この予測値から5%以下で有意に偏った頻度(過剰もしくは過少)を示した対立遺伝子を自然選択の関与が疑われる候補遺伝子とした。今回用いた30個のマーカーは10個の連鎖群にわたり、そのうち5%レベルで有意に頻度が偏っていたマーカーは、八甲田集団で6個、谷川岳集団で15個だった。これらのうち、両集団で同じ方向(過剰もしくは過少)で有意に中立頻度から逸れたマーカーが2つ見られた。複数山系において共通の挙動を示すマーカーは、偶然とは言えず、自然選択の関与が示唆される。 さらに、連鎖不平衡定数Rの値から交雑帯形成開始年代の推定を行った。この解析には連鎖の強さを考慮してマーカー間距離が1~5cMの5個のマーカーペアを用いた。この結果、谷川岳はおよそ26世代目、八甲田山はおよそ41世代目という結果が得られ、山系によって交雑開始年代が大きく異なる可能性が示唆された。既に今年度、宮城県蔵王山と福島県東吾妻山でのサンプリングを終えたので、今後はこれらの山系のデータも用いた解析を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハイマツ由来のマーカーとキタゴヨウ由来のマーカーの区別を行い、グラフィカルジェノタイピングによって、母種由来の連鎖ブロックの雑種個体のゲノムにおける認識を試みていたが、信頼に足る結果を得られないと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
乗換えを免れている連鎖ブロックの平均サイズを、グラフィカルジェノタイピングによって推定する予定であったが、この手法を採用しない事にした。交雑帯の形成開始年代の相対化は、5cM程度の強く連鎖したマーカー間の連鎖不平衡定数の算出によって行う。 また、連鎖地図の成果の論文発表化が遅れているため、論文作成を急ぐ。
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