2012 Fiscal Year Annual Research Report
系統地理学的解析および耳石分析による日本海深海性底魚群集の成立過程に関する研究
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22370032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 茂明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20242175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大竹 二雄 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (20160525)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 日本海 / 深海性底魚類 / 耳石 / 遺伝的分化 / 系統地理学 |
Research Abstract |
東京大学大気海洋研究所学術研究船「淡青丸」の研究航海を主催し、東北沖および北海道沖太平洋で、深海底魚類の採集をおこなった。ミトコンドリアDNAの塩基配列に基づきザラビクニン、マツバラゲンゲ、クロゲンゲおよびその姉妹種であるキタノクロゲンゲの集団構造を解析した。アカガレイとソウハチについて、昨年度のデータに、新たに北海道周辺産の個体のデータを加え、より詳細な解析を実施した。これまで日本海に分布する深海性底魚の集団構造として、日本海個体が他海域の個体と大きく遺伝的に分化しているパターン(ノロゲンゲなど稚仔魚期に鉛直移動しない種)と海域によらず全ての個体が遺伝的に近縁であるパターン(その他の種)が知られていたのに対して、ソウハチが種内に大きな遺伝的分化が見られるが日本海内外での分化が見られないパターン(第3のパターン)を示す事が確認された。この様なパターンがアカガレイだけでなく、ヒレグロおよびヤナギムシガレイでも報告されていない事から、この結果が分布水深では説明できない事が明らかになった。これら異体類4種の中で、ソウハチのみが黄海と渤海集団が東シナ海により他海域集団から隔離されている事から、更新世の大部分の時期を2つの集団が地理的に隔離され、間氷期初期にのみ二次的に融合した事が、本種の特徴的な集団構造を形成した可能性が考えられた。西部日本海においてマユガジ属魚類優占6種の分布調査をおこない種による地理および水深分布の差異を明らかにした。タナカゲンゲが、稚仔魚期に鉛直移動をおこなわないにも関わらず、日本海集団とオホーツク海集団の間に遺伝的分化が見られないのは、最終氷期後、成体が海峡を通って相互に分散したためであるとした仮説をミトコンドリアDNAの塩基配列によるCoalescence theoryに基づく解析により検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
系統地理学的解析では、順調に対象魚種を増やし、主要な日本海産深海底魚類の集団構造を明らかにして、日本海の底魚群集の形成と遺伝的分化の過程を体系的に理解する事が可能となった。一方で、耳石の解析は、当初の予定より遅れているが、東日本大震災のために使用不能となっていた東京大学大気海洋研究所の電子プローブマイクロアナライザーの更新と調整が終了した事により 効率的に解析を進め、当初予定した結果を出す目途が立った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、データ数が不足している魚種について追加試料の入手に努めるとともに、系統地理学的解析をおこなう。耳石については採取・保存されている試料および、新規に入手する試料について解析を進める。得られた成果に基づいて、日本海の深海底で優占する魚種の集団構造様式を分類し、耳石解析から明らかになる生活史特性や地理分布との対応を取りまとめ、日本海の過去の環境変動がどの様に深海生物相形成に作用したかを推定する。得られた成果を学会等で発表するとともに、学術論文に取りまとめる。
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Research Products
(5 results)