2010 Fiscal Year Annual Research Report
膜内プロテアーゼS2Pによるエキソサイト認識を構造生物学的手法で証明する
Project/Area Number |
22370039
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
禾 晃和 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (40379102)
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Keywords | 立体構造解析 / 膜蛋白質 / プロテアーゼ / 結晶化 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究では、膜蛋白質であるS2Pの結晶化能の向上を目指して、S2Pの細胞外領域に結合するモノクローナル抗体を作製しており、本年度の研究では、複数得られた抗体の中から、結晶化に適した高親和性抗体を選別するための実験を進めた。結晶化に適した抗体は、結合後の解離が遅いものであり、そのような抗体は抗原と安定な複合体を形成すると考えられる。そこで、抗体と抗原の解離速度定数や解離定数を算出できる表面プラズモン共鳴法を用いて抗体の評価を行った。具体的な実験手法としては、センサーチップ上に各抗体を固定化し、抗原であるS2Pの細胞外領域断片をインジェクトすることで、結合と解離のセンサーグラムを測定した。その結果、いずれの抗体も解離は非常に遅く、解離定数は10^<-9>Mオーダーであることが明らかになった。親和性の評価の後、これらの抗体を結晶化に用いるため、パパインによって切断しFab断片化した。Fab断片は最終的には膜蛋白質である全長のS2Pと結合させ、結晶化に用いる予定であるが、その前にまず細胞外領域断片との共結晶化を行うことで、精製度や構造安定性の観点から結晶化に利用可能であるかどうかの評価を行った。その結果、細胞外領域のC末端領域に結合する抗体について、構造解析可能な、複合体の結晶が得られた。シンクロトロン放射光を用いた回折実験により、2.2Å分解能の回折データが得られ、分子置換法を適用することで位相決定にも成功した。この結晶の空間群はP1であり、非対称単位中に、S2P細胞外領域とFab断片の複合体が2組存在することが分かった。また、この抗体は細胞外領域のC末端側に存在するループ領域を特異的に認識していることも構造解析から明らかになった。
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