2011 Fiscal Year Annual Research Report
膜内プロテアーゼS2Pによるエキソサイト認識を構造生物学的手法で証明する
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22370039
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
禾 晃和 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 准教授 (40379102)
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Keywords | 膜内配列切断 / X線結晶構造解析 / シグナル伝達 / ストレス応答 / 結晶化 / 構造生物学 |
Research Abstract |
本年度の研究では、RsePのペリプラズム領域に関する構造機能解析を重点的に行なった。RsePのペリプラズム領域には、PDZドメインがタンデムに2つ存在しており、本研究ではすでに、このPDZタンデムを可溶性断片として精製することで、結晶化に成功していた。そして、このPDZタンデムに対するモノクローナル抗体を取得し、PDZタンデムとFab断片の複合体の結晶も作製していた、本年度の研究では、これら2つの晶型の結晶構造解析を進め、いずれについても構造精密化を完了させた。PDZタンデム単独については、2.8Å分解能の構造を決定し,結晶学的R値は25.5%、FreeR値は29.5%まで収束した。一方、Fabとの複合体については、2.2Å分解能の構造を決定し、結晶学的R値は22.4%、FreeR値は27.2%まで収束した。いずれの晶型においてもPDZタンデムを構成する2つのPDZドメイン個々の構造については大きな変化は見られなかったが、2つのドメインの配向は大きく異なっており、ドメイン間の角度にして60度の違いが見られた。そこで、いずれの配向が溶液中で安定かを検証するため、所属研究室の佐藤衛教授の協力のもと、X線小角散乱法による溶液構造の解析も行った。 また、以前から行っているキメラタンパク質を用いた機能解析に関しても、本年度の研究で大きな進展が見られた。研究代表者は、これまでの研究から上述のPDZタンデムの配列をホモログの配列と置き換えることで、RsePの基質特異性に変化が見られるという知見を得ていた。そして、本年度は、京都大学ウイルス研究所の秋山芳展教授の協力のもと、大腸菌変異株を用いることで、基質特異性の変化に関して詳細な解析を進めた。この機能解析の成果は、上述のPDZタンデムの構造解析の成果とともに、論文発表を行う予定で有り、現在投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、膜内配列切断を触媒する特殊なプロテアーゼであるRsePの基質認識機構を解明することである。本年度の研究では、ペリプラズム領域に存在するPDZタンデムが基質認識に影響を及ぼしていることを示すデータを得ることができ、さらにそのPDZタンデムの立体構造を決定することにも成功した。これらの成果により、上述の目標達成に大きく近づいたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
RsePによる基質認識の分子機構の全貌を解明するためには、やはりRsePの全長構造が必要であると考えられる。本研究では、すでにRsePに対する抗体を取得済みであるので、抗体Fab断片を全長タンパク質との共結晶化に用いることで、結晶化の成功率を向上させたいと考えている。また、近年膜タンパク質の構造解析の分野において注目を集めている脂質液晶相を用いた結晶化にも取り組むことを計画している。 また、すでに成果の上がっているPDZタンデムの構造機能解析に関しては、できる限り早く学術誌に論文を投稿し、成果の公表を行う。
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