2011 Fiscal Year Annual Research Report
ガレクチン-3の細胞表面への結合による正常細胞の増殖抑制の分子メカニズム
Project/Area Number |
22370048
|
Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
古川 清 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (10190133)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 武史 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (30291131)
|
Keywords | ガレクチン-3 / 細胞表面糖鎖 / 細胞増殖抑制 / 細胞内情報 / 血管内皮細胞接着分子-1 / 繊維芽細胞 |
Research Abstract |
昨年度の研究で、VCAM-1の発現が消失したSV-T2細胞(癌細胞)にVCAM-1遺伝子を導入すると、細胞の増殖制御に関与するRas-MAPK経路のc-Raf,ERK1,2のリン酸化が抑制、細胞骨格の再編成に関わるPI3K/Akt経路のPTENが活性化されPDK1,Akt,mTORが抑制され、さらにその下流のp70S6KやSTAT3が抑制された。一方、インテグリンを介して接着シグナルを伝達するFAKのリン酸化は変化せず、細胞の増殖分化を促進するPKCのリン酸化(活性化)や細胞周期を制御するGSK3βのリン酸化が抑制(活性化)されていた。以上の結果から、VCAM-1を発現したSV-T2細胞を軟寒天培地で培養するとPI3K/Akt経路、STAT3経路、MAPK経路が阻害され、癌細胞の性質である足場非依存的な細胞増殖能が抑制される一方、自身が癌細胞であることから細胞の増殖を促進しようと、PKCやGSK3βが活性化される(空回りする)ことが判明した。即ち、VCAM-1の細胞膜への発現も、細胞の増殖を制御する一因子であることが判明した。 VCAM-1の細胞質領域にはリン酸化部位がないので、VCAM-1が直接情報を伝達することはできない。このことから、VCAM-1は何らかの細胞内のアダプター分子と相互作用をすることで、シグナル伝達を制御していることが推測される。細胞膜分子と細胞内骨格を結びつけるアダプター分子としてEzrin,Radixin,Moesin(ERMタンパク質)が知られている。密度依存的な細胞の増殖が抑制されたBalb3T3細胞から細胞膜を調製し、タンパク質を可溶化後抗VCAM-1抗体とDynabeads Protein Gを用いて免疫沈降を行ない、VCAM-1と結合している分子をウエスタンブロット法で解析したが、ERMタンパク質を検出することはできなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ガレクチン-3は密度が50%くらいになると細胞内から細胞外へ分泌されるが(excretion)、このガレクチン-3の細胞外への分泌を誘導する因子が未だに解明できていない。さらに昨年度の研究から細胞の増殖制御にはVCAM-1自身の細胞膜での発現量も重要であることが判明し、ガレクチン-3による細胞の増殖制御にこのファクターを加味して解析を行わなければならなくなったから。
|
Strategy for Future Research Activity |
密度依存的な繊維芽細胞の増殖制御に、ガレクチン-3とVCAM-1の結合,それに引き続くRas-MAPK経路の抑制を明らかにしつつある。この過程で最も重要なステップはガレクチン-3の時期を得た細胞外への分泌(excretion)であり、この分泌を促進する因子が何であるかを明らかにすることが真に重要である。excretionはカルシウムで促進さることが報告されているので、カルシウム・イオノフォアやキレート剤を用いてガレクチン-3の細胞からの分泌を解析する計画である。
|
Research Products
(7 results)