2010 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子モーターのシミュレーション研究:運動から化学反応制御への構造機能解析
Project/Area Number |
22370057
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 彰二 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60304086)
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Keywords | キネシン / ATP加水分解 / 分子動力学 / 粗視化モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、原子レベルおよび粗視化レベルの分子シミュレーションを駆使して、キネシンを中心とした分子モーターにおける、「運動→構造変化→反応」の制御機構を、構造に立脚したメカニズムとして明らかにすることである。平成22年度、まずヌクレオチド非結合状態のキネシン頭部とチューブリンαβとの複合体の原子分解能モデリングを行った。富重らのヌクレオチド非結合状態のキネシン構造データをもとに、複合体モデルをつくり、水を陽に含む系で数十ナノ秒の緩和の分子動力学シミュレーションを行い、結果を電子顕微鏡による電子密度と比較した。界面に位置するキネシンのα4ヘリックスとその両側のループの構造変化、キネシン頭部のC末端にあるネックリンカーなどに構造変化が観察された。その意味や解釈については解析を継続している。次に、ADP結合型のキネシン頭部とチューブリンαβとの複合体モデルについても、同様の分子動力学シミュレーションを行った。また、関連する分子モーターであるF1-ATPaseの回転運動と化学反応の相関を調べるために、これまで解かれた29個の複合体X線構造を系統的に解析した。各酵素部位αβの構造は、これまで知られてきたとおりATP結合型、ADP結合型、ヌクレオチドフリー型の3つに分類できた。回転子γの回転と相関するαβの構造変化を探した結果、興味深い点として、リン酸解離に係る構造変化とγの回転角が顕著に相関することが明らかになった。このことは、リン酸解離過程がγの回転に重要な寄与をすることを示しており、最近の実験結果を補強する興味深いデータである。
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