2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子モーターのシミュレーション研究:運動から化学反応制御への構造機能解析
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22370057
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 彰二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60304086)
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Keywords | キネシン / ATP加水分解 / 分子動力学 / 粗視化モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、原子レベルおよび粗視化レベルの分子シミュレーションを駆使して、キネシンを中心とした分子モーターにおける、「運動→構造変化→反応」の制御機構を、構造に立脚したメカニズムとして明らかにすることである。平成23年度(平成24年度に繰越)の研究課題として、1)双頭キネシンにおいて、双頭がチューブリンと結合した構造モデルを精密化し、2)そのモデルにおいて、双頭をつなぐネックリンカーにかかる張力を計算で見積もり、3)キネシン内でのATP加水分解の化学反応機構を、量子古典ハイブリッドメタダイナミクス計算により解析した。1)進行方向の前の頭部をL、後ろの頭部をTと書くと、双頭がチューブリンと結合した状態には、L(φ)―T(ATP)、L(ATP)―T(ATP)、L(φATP)―T(φ)があるが、これらの構造モデルを作成し、2)これらの中で最初の状態以外はネックリンカーにかかる張力が極めて大きくなることが明らかとなった。3)キネシンファミリーのタンパク質Eg5について、ATPが結合したX線構造、ADPが結合したX線構造のそれぞれについて、ATP加水分解反応を調べるために、ATP周りの約200原子を量子化学計算、残りを古典力学計算する量子古典ハイブリッド計算を実施した。とくに、加水分解反応の自由エネルギー解析を行うために、メタダイナミクスを適用した。ATP型について、数本の収束した軌道を得た。基質水分子のγリン酸への攻撃とγリン酸の結合切断とは協奏的に起こり、そのあと基質水分子の余剰プロトンが隣の水分子へ移動し、さらにその水分子の別のプロトンが隣のグルタミン酸へと移動する過程が見いだされた。いったんプロトン化したグルタミン酸は少し後に別のルートでγリン酸へもどり化学反応が終了することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的どおり、順調に、キネシンの構造からくる化学現象の解析と、ATP加水分解の化学反応を研究している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進行中であり、このままのペースで推進する。ATP加水分解については、ADPが結合した構造のときの量子古典ハイブリッド計算をすすめ、これまでのATP型との差異を論じる。
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