Research Abstract |
本研究では,最近新たに見つかった酸素耐性NAD^+還元4量体ヒドロゲナーゼや,膜結合性シトクロムb含有ヒドロゲナーゼの高分解能X線結晶解析を行うことを目的とした.平成22年度は,水素酸化菌Hydrogenophilus thermoluteolus TH-1 (HtTH-1)の培養法と本菌体由来の新規のNAD^+還元型[NiFe]ヒドロゲナーゼの精製法を確立した.平成23年度は,本ヒドロゲナーゼのNAD^+還元活性測定方法において,測定溶液に終濃度0.1mg/mLのBSAを添加することで,酵素活性を安定して測定できることを見出した.結晶化スクリーニングを行った結果,10%(w/v) PEG3350, 0.1M Tris-HCl pH8.5, 0.2M MgCl_2,4℃の条件で単結晶の調製に成功した. 膜結合性シトクロムb含有6量体ヒドロゲナーゼについては,高分解能X線結晶解析に成功した.その結果,分子が3個もつ鉄-硫黄クラスターのうち触媒反応中心であるNi-Fe活性部位のもっとも近くに位置する鉄-硫黄クラスターが,従来まで知られていた[4Fe-4S]-4Cys型ではなく,新規の構造である[4Fe-3S]-6Cys型であることがわかった.これまでに研究されていた標準型ヒドロゲナーゼは酸素条件におかれるとO_2が活性部位に結合しその活性が失われることが知られていた.構造解析の結果,酸素耐性能をもつ膜結合型ヒドロゲナーゼは,O_2にさらされたとき,[4Fe-3S]-6Cys型の鉄-硫黄クラスターにおいて特徴的な構造変化が起こることを見出した.さらに,この構造変化により鉄-硫黄クラスターはNi-Fe活性部位に電子を1個余分にあたえ,酸素による不活性化をまぬがれていることを明らかにした.本結果は,2011年のNature誌に掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
膜結合性シトクロムb含有ヒドロゲナーゼの高分解能X線結晶解析を完了し,この酵素の酸素耐性機構の構造基盤が新規の鉄-硫黄クラスターにあることを世界で初めて見いだすことに成功した.また,その結果をNature誌に発表することができた.
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