2010 Fiscal Year Annual Research Report
生細胞内ヒストンメチル化可視化による不活性X染色体動態の解析
Project/Area Number |
22370063
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 宏 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (30241392)
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Keywords | 染色体 / クロマチン / ヒストン / 翻訳後修飾 / 転写制御 / エピジェネティクス / 不活性X染色体 |
Research Abstract |
ヒストンのリジン残基のメチル化は、DNAのメチル化と共にエピジェネティックな遺伝子発現制御において中心的な機能を持つ。我々は、個々の細胞レベルでのヒストン修飾の時空間動態を明らかにするため、蛍光標識Fabによる生細胞ヒストン修飾可視化系を開発している。本研究は、この技術を確立するするとともに、特にヒストンH3 Lys27のトリメチル化(H3K27me3)などを指標に、不活性X染色体の動態を明らかにすることを目的としている。今年度は、まず異なるヒストン修飾を同時に可視化するため、様々な波長特性を持つ蛍光色素について、生細胞観察における適性を解析した。緑色の蛍光色素では、Alexa488は光安定性に優れており、細胞質における凝集もほとんど見られなかった。それに対し、赤色蛍光色素でFabを標識した場合、多くがFabの活性を低下させたほか、細胞質での凝集も顕著にみられた。その中では、Cy3が最もFabの活性に影響を与えず、また光安定性も優れていた。赤外領域の色素では、Cy5が生細胞観察に適していたものの退色が著しいのが問題であった。これらの結果を踏まえ、Alexa488標識H3K27me3特異的FabとCy3標識PCNAを女性由来ヒト細胞に導入し、細胞周期に伴う不活性X染色体の細胞核内動態を追跡した。固定された細胞標品を用いた解析から、不活性X染色体はS期に核膜周辺から核小体近傍へダイナミックに移動することが示唆されている。しかし、生細胞解析の結果、不活性X染色体はS期の後期に複製することが確認されたが、その細胞核内局在はDNA複製の時期を含め細胞周期が進行してもダイナミックな変化は見られなかった。従って、不活性化の維持に核小体との相互作用は必ずしも必要ではないことが明らかとなった。
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