2011 Fiscal Year Annual Research Report
bHLH-ZIP型転写因子群によるゴルジ体ストレス応答の制御ネットワークの解明
Project/Area Number |
22370069
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
吉田 秀郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (60378528)
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Keywords | ゴルジ体 / 小胞体 / ストレス応答 / 転写制御 / 小胞体ストレス / ゴルジ体ストレス / 糖鎖 / 小胞輸送 |
Research Abstract |
ゴルジ体は、分泌タンパク質の修飾や選別輸送を行う細胞小器官である。ゴルジ体の量は細胞の需要に応じて厳密に制御されているが、その機構(ゴルジ体ストレス応答)の詳細は不明である。前年度までの研究によって、ゴルジ体ストレス応答によって転写が誘導される標的遺伝子(ゴルジ体の糖鎖修飾遺伝子やゴルジ体以降の小胞輸送因子遺伝子)を同定し、転写誘導を制御する転写制御配列GASEと転写制御因子TFE3を同定した。また、平常時にはTFE3はリン酸化されていると同時に、細胞質に存在しているが、ゴルジ体ストレス時(ゴルジ体の機能が不足する状態)には脱リン酸化が起こることと、核へ移行することを見いだした。 今年度は、TFE3のリン酸化部位を検索した結果、108番目のセリン残基(S108)がリン酸化に必須であることを見いだした。S108をアラニンに置換したTFE3-S108A変異体は細胞質に繋留されず、常に核に局在することがわかった。このことは、TFE3の細胞内局在性がリン酸化によって制御されていることを示している。 また、ゴルジ体ストレスの分子的実体について解析するために、細胞にゴルジ体の機能を不足させる処理を行い、TFE3が活性化されるかどうか調べたところ、ゴルジ体での糖鎖修飾を阻害する薬剤(ムチン型糖鎖付加の阻害剤Benzyl-GalNAcやプロテオグリカンの糖鎖付加阻害剤Xyloside、ゴルジ体のマンノシダーゼII阻害剤swainsonine)や、ゴルジ体以降の小胞輸送の阻害する薬剤(PI4Kの阻害剤WortmanninやLY294002、PIK-93、PIKfyveの阻害剤YM201636)などによってTFE3の活性化が起こることがわかった。このことは、ゴルジ体での糖鎖修飾が未完成のままであったり、ゴルジ体に大量の分泌タンパク質が蓄積することがゴルジ体ストレスの引き金になっていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ゴルジ体ストレス応答の中心的制御因子TFE3の活性化機構が、分子の脱リン酸化に伴う細胞内局在性の変化であることを明らかにすることができた。このことは、ゴルジ体ストレス応答の基本機構の中心的制御機構が脱リン酸化によって制御されていることを示すものであり、画期的な成果であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴルジ体ストレス応答の中心機構が転写因子TFE3の脱リン酸化であることを明らかにしたので、次年度はTFE3のリン酸化を制御する因子(リン酸化酵素と脱リン酸化酵素)の単離を試みる。単離したリン酸化酵素と脱リン酸化酵素の活性化機構を解析し、順次情報伝達経路の上流に向かって解析していくことによって、最終的にゴルジ体ストレスを感知するセンサー分子に至る細胞内情報伝達経路の全貌を明らかにする。
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