2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質膜透過におけるSecDFの機能とプロトン駆動力の役割
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22370070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 博幸 京都大学, ウイルス研究所, 准教授 (10243271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 芳展 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (10192460)
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Keywords | SecDF / プロトン駆動力 / SecYEG / SecA / タンパク質膜透過 |
Research Abstract |
タンパク質の膜透過の補助因子として働くSecDFの機能を明らかとするべく、昨年度に高度好熱菌由来のSecDFの立体構造を3.3Å分解能で明らかとした。立体構造情報から、SecDFの膜貫通領域が、プロトン薬剤アンチポータAcrBの対応領域と極めて類似している事から、SecDFもAcrBと同様に、膜を挟んで形成される膜電位(PMF)のエネルギーを用いて、プロトンの流入と共役する形でタンパク質を輸送するとの作業仮説を立て、生化学的、遺伝学的、生物物理学的方法を用いて、実証目指した。本年度は、1)プロトンの流入に関与すると示唆されている膜貫通領域内の保存された電荷アミノ酸残基の変異体を作製し、これらのアミノ酸が、SecDFの機能に必須である事を実験的に示した。2)in vitro膜透過実験から、SecDFの膜透過昂進能には、PMFが必須である事を示した。3)巨大スフェロプラスとを用いたパッチクランプ実験から、好熱菌SecDFが実際にイオン透過活性を持つ事、この透過活性に、上記の保存された電荷アミノ酸が必須である事を見いだした。4)部位特異的光架橋実験より、膜透過途上の基質タンパク質分子がSecDのP1ドメイン(非細胞質側の巨大な第1ドメイン)中のクレバス中に近接していることを見いだした。5)海洋性ビブリオ菌由来のSecDFは培地中のNaClの濃度に依存して分泌能を高めることを見いだした。以上の結果から、SecDFは、プロトンの透過に伴う、自身の構造変化により、膜透過途上の基質タンパク質分子を引っ張る事で膜透過を昂進させるとの新たなモデルを提唱した。(680文字)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主な目的は、タンパク質膜透過促進因子SecDFの立体構造解析と、その機能発現におけるプロトン駆動力(PMF)の役割を明らかにすることである。課題が採択された後、順調に研究は進展し、上記研究目標はほぼ達成できたと考えている。本年度は、この成果をとりまとめ、Nature誌に論文として報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上でも述べたように、研究課題は概ね達成できた。研究期間を1年を残し、現在は、研究の遂行中に新たに出て来た疑問(PMFのエネルギーをどのような形で、タンパク質の動きと行った運動エネルギーに転換しているのか)を解明すべく研究を進めている。具体的には、SecDFの立体構造情報と部位特異的in vivo光架橋実験を組み合わせて、プロトンの流入と共役したタンパク質の構造変化をモニターする系の構築を進めている。
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Research Products
(5 results)