2012 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック変異発動システムによるリンゴ枝変わり品種の作出
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22380003
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
原田 竹雄 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10228645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千田 峰生 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30261457)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | RNAサイレンシング / エピジェネティック / siRNA / リンゴ |
Research Abstract |
リンゴは永年生栄養繁殖性作物であり、長い成長期間においては様々な突然変異がおこる。突然変異の原因はトランスポゾン転移説が有力であったが、この数年でエピジェネティックな変化が関与している例も知られてきた。すなわち、接ぎ木などによってもエピジェネティックな変化が確認されている。そこで、接ぎ木でsiRNAを接ぎ木相手に輸送させて、接ぎ木相手にエピ変異を発動させることをリンゴで行うシステムに挑戦した。 リンゴでのある内生遺伝子のプロモーター配列を得て、それを逆位反復配列としこれを恒常的発現プロモーターCaMV35Sにてドライブするコンストラクトを完成させて、タバコの葉へのアグロインフィルトレーションにて一過的に強発現させたところ、21-24nt small RNA産生が確認された。 上記のコンストラクトをリンゴのRNA篩管輸送ターミナルである伴細胞で発現させるべく、伴細胞特異的な機能を示すCammelina Yellow Mottole Virusのプロモーター(CoYMV)を用いた。その伴細胞特異的発現はCoYMV:GUS導入リンゴの3年木においても強力に機能することを確認した。 そこで、リンゴにおいてサイレンシングを受けると有用形質になると考察された複数の遺伝子の二本鎖RNAをCoYMVにて産生するためのコンストラクトを作製し、実際にそのsiRNAが確認されるかを調査したところ上述のタバコの系で検出できた。 しかし、実際のリンゴの形質転換体の作出は、リンゴ培養体のコンタミが拡大したため、本格的に取り組めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年5月から、実験材料であるリンゴ茎頂より得たシュート培養に部屋単位の大規模なコンタミが発生し、それらを廃棄処分した。このため、冷保蔵していた少数の材料より増殖を開始して、コンタミ問題は約5カ月後(10月)に解決した。しかし、研究は予定していた実験を行うことに至らなかった。 一方、組換え体が比較的容易に行えるリンゴ野生種の培養個体を獲得することができ、それらの活用に目途がたったこと、また、ターゲット遺伝子としてリンゴライプニング果実特異的に発現する細胞壁分解酵素の一つであるポリガラクツロナーゼ(PG1)遺伝子のプロモーター領域を特定し、その配列のInverted repeatを篩管特異的プロモーター下で発現させるsiRNA産生用のコンストラクトを作製し、アグロインフィルトレーションにて、そのsiRNA産生能を確認できた。 さらに、直接栽培品種から目的のTGS個体を獲得する手法についても考案して、その実用性の検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者はこれまでリンゴ果実の分子遺伝学的研究を進めてきた。特に日持ち性に関しての研究から、日持ち性の良否を決定している遺伝子について特定してきた。そこで、それらの遺伝子をTGSでノックダウンすることを目標として研究を展開する。現在進めているポリガラクツロナーゼ(PG1)遺伝子のみならず、エチレン生合成遺伝子ACS1やACS3aについても同様の実験を行いたい。さらに、果実のリンゴに関する研究では、収穫前落果の抑制、切断果肉面における褐変反応の抑制についてのTGSにも拡大したい。TGSを導入する栽培品種としては「王林」、「つがる」、「ふじ」を対象とする予定である。 これらの目標が達成できれば、本研究プロジェクトで用いた技法はリンゴだけでなく、多くの作物、特に栄養体繁殖作物であるジャガイモなどの作物、においても活用できることから、画期的な新たな育種法となる可能性が高い。
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