2011 Fiscal Year Annual Research Report
パンコムギのもつコムギ連近縁種との交雑バリアーに関する分子細胞遺伝学的解析
Project/Area Number |
22380004
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木庭 卓人 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 教授 (40170302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々 英徳 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 准教授 (50295507)
菊池 真司 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 助教 (80457168)
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Keywords | 育種学 / パンコムギ / 交雑親和性 / QTL解析 / 花粉管 / RIL / 5B染色体 / 分子マーカー |
Research Abstract |
パンコムギの近縁異種植物との交雑親和性に関与する遺伝子はパンコムギの第5同祖群染色体に座乗していることは明らかとなっている。いずれも異種植物の花粉を授精させた場合に、授精を抑制する優性遺伝子である。それらの中でも、5B染色体に座乗するKr1遺伝子が最も抑制効果が大きい。Kr1遺伝子の座乗位置については5B染色体長腕であると考えられてきたが、最近、5B染色体短腕に大きな効果をもつSkr遺伝子の存在が明らかとなった。そこで、従来、交雑親和性遺伝子の分析に用いられてきたパンコムギ品種Hopeについて、一昨年の結果を再検証すべく、新たにCS/Hope5BのRIL集団においてQTL解析を行うとともに、共焦点顕微鏡を用いて花粉管の伸長について詳細な観察を行った。その結果、5B染色体上で交雑親和性に関与する遺伝子は、明らかにSKrであり、従来考えられていた5B染色体長腕上のKr1遺伝子は存在しないという結果を得た。また、ライムギとの交雑によって得られる雑種種子形成率によって測定される交雑親和性と、パンコムギ柱頭から花柱に至るライムギ花粉の花粉管伸長の程度とが相関関係にあることが判明した。以上のことから、パンコムギにおける交雑親和性を制御する遺伝子は5B染色体短腕上のSkrと命名された遺伝子であり、これが従来のKr1に相当するものであって、5B染色体長腕には交雑親和性に関与する遺伝子は存在しないと結論できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パンコムギの異種植物との交雑親和性を制御する遺伝子が5B染色体短腕に座乗することが明確に示されたこと、および花粉管の伸長の程度と交雑親和性との間に相関が存在することを明らかにしたことにより、おおむね順調であると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本遺伝子がどのような性質の遺伝子であるのか明らかにする必要があり、そのためマップベースクローニングを検討したが、パンコムギのゲノムサイズの大きさと分子マーカーの密度を考慮すると、その手法は困難であることから、イネやBrachypodiumとのゲノムシンテニーから該当する遺伝子の探索を行うこととしている。また、5A染色体、5D染色体上の同祖遺伝子についても解析のための材料づくりを開始する。
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