2011 Fiscal Year Annual Research Report
オオムギの耐塩性に関わる生理機構と遺伝子座の統合的解明
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22380012
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
平沢 正 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (30015119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大川 泰一郎 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (80213643)
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Keywords | オオムギ / 光合成速度 / 耐塩性 / 稔実歩合 / 量的形質遺伝子座(QTL) / 葉内Cl^-濃度 / 葉内K^+濃度 / 葉内Na^+濃度 |
Research Abstract |
本研究は耐塩性の大きく異なるオオムギ品種を用いて、塩ストレス条件における光合成と乾物生産、子実生産に関わる生理機構とその分子機構を解明すること、および、耐塩性に関わる形質の遺伝子座を検出し、その遺伝子座の生理機能を解明することを目的とする。平成23年度は以下の成果が得られた。 (1)100mM NaClを含む水耕液を灌水したバーミキュライトに幼植物から生育させると、耐塩性の高いオオムギ品種OUE812は耐塩性の低い品種OUC613に比較して、出穂期における光合成速度および稔実歩合の低下程度が明らかに小さい。そこで、Na^+、Cl^-、K^+の蓄積量を品種間で比較し,植物体内のイオン濃度と光合成速度および稔実歩合との関係について検討した。その結果、100mM NaCl処理植物の葉身のNa^+、Cl^-濃度は、若い葉身ほど低く、そして、OUE812はOUC613に比較して有意に低かった。100mM NaCl処理植物の葉身のK^+濃度はOUC613で低下し、その結果、Na^+/K^+はOUE812が有意に低くなった。一方、穂では、100mM NaCl処理によって子実のNa^+、Cl^-の濃度は両品種ともに増加は認められなかったが、内外頴、穂軸と小穂軸、芒では濃度は増加し、UE812の増加程度が大きかった。K^+膿度はOUE812の内外頴を除いて、100mM NaCl処理による増加は認められなかったので、子実以外の穂各部位のNa^+/K^+はOUC613よりもOUE812の塩処理区で有意に高くなった。葉身の光合成速度はNa^+、Cl^-濃度との間には負の、K^+の間には正の相関が見られた。しかし、内外頴のNa^+、Cl^-濃度と稔実歩合の間の関係は明らかでなかった。以上の結果から、Na^+、Cl^-濃度を低く、そしてK^+の濃度を高く維持することが葉の光合成速度を高く維持することに関係するが、穂の稔実歩合にはイオン濃度以外の要因が関与することが示唆された。 (2)耐塩性に関わる量的形質遺伝子座(QTL)解析材料を作出するため、OUE812とOUC613の組換え近交系の育成をF_5世代まで進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度実施予定であった長期間の塩ストレス条件下で子実生産を維持する機構の解明については、当初の計画よりも内容を充実させて現在研究を進行させている。岡山大学が作成したオオムギの遺伝解析材料の中から、耐塩性の異なる両親由来の遺伝解析材料を見出した。これを用いて、稔実歩合に関わるQTL解析を実施している。これは平成23年度計画になかった研究で、計画以上に進展している内容である。
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Strategy for Future Research Activity |
岡山大学が作成したオオムギの遺伝解析材料の中から、耐塩性の異なる両親由来の遺伝解析材料を見出したので、これを用いて、耐塩性に関わる形質のQTL解析をさらにすすめる。併せて、耐塩性の強い品種OUE812と弱い品種OUC613由来の組換え近交系(以下、RIL)を用いた遺伝解析材料を完成させ、耐塩性に関わる形質のQTL解析を実施する。 これに基づいて耐塩性オオムギ品種育成のためのDNAマーカーの作出と耐塩性関連形質の遺伝子同定に向けて今後の研究戦略を立てる。
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Research Products
(2 results)