2011 Fiscal Year Annual Research Report
転換畑ダイズ作安定化のための水環境適応・制御支援モデルの開発
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22380014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白岩 立彦 京都大学, 農学研究科, 教授 (30154363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 信二 農研機構, 中央農業研究センター, 上席研究員 (30355309)
田中 朋之 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50224473)
本間 香貴 京都大学, 農学研究科, 講師 (60397560)
桂 圭祐 京都大学, 農学研究科, 助教 (20432388)
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Keywords | ダイズ / 生育モデル / 転換畑 / 土壌水分 / 収量 / 窒素固定 |
Research Abstract |
ダイズの最大の生産変動要因は水環境変動である。本研究は,ダイズの生育・収量を気象から予測する既存モデルに、水田転換畑圃場における水収支動態ならびに過湿ストレスに対する生育反応を考慮するモジュールを新たに組み込み、日本の栽培環境に即した生育予測モデルを開発するものである.平成22年度は下記のような研究を実施した. 1.滋賀県における上限収量の推定 滋賀県の慣行栽培期間において、1980年から2007年の各年次の気象条件のもとで、日射環境によって決まる上限収量を試算した。上限収量はヘクタール当たり5~6トンであり年度を経るにしたがい微増傾向にあった。これに対して滋賀県の平均収量はヘクタール1.5~1.7トン、実収量の上限収量に対する割合は、25~35%と著しく低い状態にあることが明らかになった。 2.過剰水分などが生育諸過程に及ぼす影響のモデル化 滋賀県農業技術振興センター研究水田に前年度設置した地下水制御システム(南北40m×東西80mの圃場を南北方向に5分割し、それぞれの区画の地下水位を独立に制御)をもちいて圃場実験を実施した。品種エンレイを6月および7月に播種し、出芽10~15日後から約2週間地下水位を深さ10~20cmまで上昇させ、それ以外の期間の地下水位は最適とされる深さ50~60cmに維持する過湿区と、過湿処理を行わない対象区を設けた。生育初期の過湿処理により収量は25~31%低下し、それには(1)葉面積と受光率と(2)日射利用効率の低下の両方に起因するこ乾物生産の低下が関与することをみとめた.また,窒素蓄積量も低下するが、重窒素自然存在比法によって推定した窒素固定寄与率に、過湿区と対象区の間で際がみられないことから、生育初期の過湿処理により、窒素固定活性とともに窒素吸収も低下することがわかった。 3.転換畑における水収支モジュールの開発 圃場の有効土壌水分の動態を,気象から再現するモデルの転換畑圃場への適用性について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気象から収量を推定する簡易モデルの適用により、対象地域(滋賀県)におけるダイズの上限収量を概括することだできた。また、生育初期の過湿がダイズの生育・収量に及ぼす影響について、3つの作期の実験結果からなるデータセットが構築された。これらは今後のモデル構築の基礎データとして用いることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
対象地域(滋賀県)の気象データにもとづき、土壌水分環境を定量的に表すことが課題となっている。そのために、圃場実験の反復を行うとともに、過去データの収集を行い、水収支モジュールの開発を促進する。
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