2011 Fiscal Year Annual Research Report
カンキツの果実離脱に関わる分子機構の解明と単為結果性の評価
Project/Area Number |
22380025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北島 宣 京都大学, 農学研究科, 教授 (70135549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽生 剛 京都大学, 農学研究科, 助教 (60335304)
清水 徳朗 (独)農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所, 上席研究員 (90355404)
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Keywords | 果樹 / カンキツ / 果実 / 単為結果 / 離脱 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
1:樹上環状剥皮果実と採取果実の離脱ソ連タンゼロとウンシュウミカンを用い、樹上果実の果梗部を環状剥皮すること(樹上果実)、採取果実を1%寒天培地に挿すこと(採取果実)により離脱を誘導して、離脱率を調査した。樹上果実と採取果実の離脱はいずれもソ連タンゼロで高く、ウンシュウミカンで低く、樹上果実と採取果実の離脱は類似したパターンを示した。このことから、採取果実の離脱誘導は離脱機構の調査に有用であることが示された。 2:離脱誘導による異なる種の自然受粉果実と花粉遮断果実の離脱ウンシュウミカン、'平戸文旦'、ポンカン、ヒュウガナツ、イヨカン、ワシントンネーブルの自然受粉(OP)果実と花粉遮断(NP)果実を用い、採取果実の離脱誘導による果実離脱を調査した。ウンシュウミカン、'平戸文旦'、ヒュウガナツはNP果実の離脱が顕著に抑制され、種子調査によりこれらは無核であったことから、高い単為結果性を有していると考えられた。また、これらのOP果実の離脱も顕著に抑制されており、自然受粉果実の離脱特性をもとに単為結果性を推定できる可能性が示唆された。 3:果実の離脱に関連する遺伝子の推定ウンシュウミカンとポンカンのNP果実を採収し、離脱誘導後に離脱部位を含む組織からRNAを抽出し、マイクロアレイ解析とqRT-PCR解析により遺伝子の発現量を調査した。その結果、細胞壁分解に関する酵素であるβ-galactosidase、多糖類や糖鎖の合成に関与するUDP-glucosyl transferase、エチレン生成に関連するACCoxidaseがなどが果実離脱に関連することが示唆された。また、離脱誘導24時間後には離脱の引き金が引かれている可能性も示唆された。 これらの結果から、カンキツの単為結果性評価の手法が確立されつつあり、果実離脱に関わる分子機構解明も進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単為結果性の評価に関しては、自然受粉果実の離脱特性から推定できる可能性が示唆され、予想外の成果が得られた。一方、遺伝子発現解析では、年次による発現量の変動が大きいものもあり、再現性の評価が必要である。しかし、果実離脱に関連する候補遺伝子がある程度推定できたことから、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
単為結果性評価に関しては、自然受粉果実の離脱特性から推定できるかについて再現性を確認するとともに、この手法により多くのカンキツ種について単為結果性を評価する必要がある。遺伝子発現解析では、年次による発現変動の原因を精査するとともに、年次の反復実験を積み重ねる必要がある。さらに、離脱部位における細胞の形態学的な変化を明らかにすることや、細胞壁構成多糖類の分析やエチレン発生量を測定するなど、遺伝子発現との関連を明らかにすることが必要である。
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Research Products
(3 results)