2011 Fiscal Year Annual Research Report
キメラ抵抗性遺伝子を用いたウイルス・卵菌類複合抵抗性の分子機構の解明
Project/Area Number |
22380028
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 英樹 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20197164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 杉尋 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10442831)
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Keywords | ウイルス抵抗性 / キュウリモザイクウイルス / 病害抵抗性遺伝子 / NB-LRRタンパク質 |
Research Abstract |
研究代表者が独自に単離・研究してきたRCY1/RPP8抵抗性遺伝子座は、CC-NB-LRRドメインをもつRタンパク質をコードしており、その対立遺伝子がキュウリモザイクウイルス(CMV)とアブラナ科べと病菌(Hpa)の抵抗性遺伝子(RCY1とRPP8)に分化している。 本年度は、(1) RCY1とRPP8のLRRドメインを相互に交換したキメラRCY1/RPP8遺伝子(RPRPCYとCYCYRP)に加えて、RCY1とRPP8のLRRドメイン内で部分的にアミノ酸置換を誘導したキメラRCY1/RPP8遺伝子を5種類構築した。(2) 得られたすべてのベクターコンストラクトを用いて、アグロインフィルトレーションによる一過的遺伝子発現法により、病原体応答の特異性を決定する機能ドメインの解析を行ったところ、RCY1 タンパク質のLRRドメイン内には、CMV系統に特異的認識に関わる領域、過敏感細胞死に関わる領域、RCY1タンパク質の自己分解に関わる領域などが存在する可能性が示唆された。さらに、(3) キメラRCY1/RPP8遺伝子(RPRPCYとCYCYRP)形質転換したシロイヌナズナを作成し、CMVとHpaに対する応答を解析したところ、LRRドメインの相互置換により、両病原体に対する抵抗性応答も入れ替わることが明らかになった。 また、野生型RCY1、野生型RPP8、キメラRPRPCYをそれぞれ形質転換したNicotiana benthamianaを作出し、CMVに対する応答を解析したところ、野生型RCY1およびRCY1のLRRドメインをもつRPRPCY形質転換体では抵抗性応答が生じ、野生型RPP8 形質転換体では罹病性応答が誘導された。このことから、LRRドメインによるCMV認識と抵抗性誘導は、ナス科のN. benthamianaでも生じることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キュウリモザイクウイルス(CMV)とアブラナ科べと病菌(Hpa)の認識特異性が、RCY1とRPP8タンパク質のLRRドメインであることが明らかにされたことから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、(a)CMV抵抗性遺伝子(RCY1)とべと病菌抵抗性遺伝子(RPP8)のLRRドメインにより両病原体の認識特異性が決定される、(b)RCY1はCMV外被タンパク質(CP)とCPコードRNAの両方を認識し、抵抗性シグナル伝達系を活性化される、(c)RCY1のCC-NBドメインは転写因子WRKY70の相互作用を介して抵抗性シグナル伝達系を活性化させることを明らかにした。そこで今後は、(1)CMVのCPやCPコードRNAの認識特異性を規定しているLRRドメインのアミノ酸部位と高次構造の解析、(2)RPP8タンパク質のLRRドメインが認識するべと病菌エフェクタータンパク質の単離、(3)LRRドメイン内のRCY1/RPP8キメラ遺伝子シリーズを導入した形質転換植物を作出し、CMVおよびべと病菌に対する認識と応答を確認する。
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