2011 Fiscal Year Annual Research Report
バキュロウイルスをモデルとした長鎖非コードRNAの機能解析
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22380033
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝間 進 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (20378863)
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Keywords | バキュロウイルス / 昆虫 / 非コードRNA / 発現制御 / 遺伝子 / 転写 / 昆虫ウイルス / ウイルス |
Research Abstract |
昆虫ウイルスの一種であるバキュロウイルスは、100kbp以上の2本鎖DMをゲノムとして持つ大型のDNAウイルスであり、高度な宿主制御を行うことが知られている。バキュロウイルスゲノムには100個以上のタンパク質コード遺伝子が存在するが、非コードRNAの存在は知られていない。申請者は、ウイルス感染培養細胞のトランスクリプトーム解析によって、既報のORFをコードしない長鎖非コードRNAがウイルスゲノムから転写されている可能性を見い出していた。実際、昨年度までに、ウイルス感染培養細胞から作成した完全長cDNAライブラリーのランダムシークエンシングから50~100種の長鎖非コードRNAと思われる転写産物を同定している。今年度は、それらの非コードRNAだと考えられる転写物のプロモーターを欠損した組換えウイルスの作成を行った。非コードRNAはほとんどの場合、タンパク質コード遺伝子とオーバーラップして存在する。そのため、プロモーター欠損ウイルスを作成する際は、コード部分のアミノ酸を置換しないような変異を導入するようにプラスミド上でコンストラクトを作成し、培養細胞内での相同組換えによって変異ウイルスを作成した。現時点では5種類程度のウイルスの作成に成功しており、その性状について調査中である。また、オリゴプローブを用いたノザンブロットにより、非コードRNAを検出することに成功した。いくつかの非コードRNAについて発現解析を行ったところ、(1)近傍にマーカー遺伝子が挿入されることで発現量が増大するもの、および(2)オーバーラップするタンパク質コードRNAの発現を制御していると考えられる非コードRNAを同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バキュロウイルスがコードする非コードRNAのプロモーター欠損ウイルスの作成法を確立し、これまでに5種類のウイルスを完成させることができている。また、オリゴプローブを使った非コードRNAの検出法を確立し、ウイルス感染時の発現を調査した結果、一部の非コードRNAはタンパク質コードRNAの発現量に関わっている可能性を見いだすことができた。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
バキュロウイルスの非コードRNAの役割を"ゲノムワイド"に明らかにすることが、本研究の目的である。そのため、できるだけ多くの変異ウイルスを効率よく作成できるシステムを構築する必要があると考えている。また、培養細胞だけではなく、昆虫個体における性状解析にも着手する。
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