2010 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫変態の分子機構-インスリン様ペプチドの作用と代謝制御
Project/Area Number |
22380034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岩見 雅史 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (40193768)
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Keywords | 昆虫変態 / インスリン / エクジソン / カイコガ / プロインスリンCペプチド / 血糖調節 / 代謝調節 / 個体発育・寿命 |
Research Abstract |
昆虫は、幼虫から幼虫へ幼虫期を繰り返して寿命を延長する。一方、幼虫から蛹を経て成虫への変態過程では、自己の寿命と引き替えに生殖サイクルへと移行する。本研究では、カイコガをモデルに、インスリン様ペプチドの幼虫から蛹期までの作用を、エクジソンや幼若ホルモンとの相互作用を念頭に、糖や脂質の代謝、生殖細胞への影響に焦点を当て解析することにより、動物界に共通する個体全体の代謝、発育調節、生殖システムを探ることを目的とするものである。 初年度は、インスリン様ペプチド(ボンビキシン)の全体像を遺伝子レベルで明らかにし、さらに、エクジソンにより糖代謝がどのように調節されているかを探った。これまでにゲノムあたり30コピー以上のボンビキシン遺伝子を単離してきたが、未知の遺伝子の存在が示唆されていた。そこで、ゲノムデータを再検証し新規5ファミリーを同定した。遺伝子構造解析と発現解析(発生過程での発現動態と細胞特異的発現動態)を行い、脂肪体や卵巣に強発現するインスリン祖先型と判断される遺伝子を同定した。 桑の主要な二糖類であるスクロースやマルトースを分解する酵素の活性を調べた。前終齢幼虫において、両酵素の活性は、摂食期に高く維持されており、眠期では摂食開始期程度まで低下していた。眠期はエクジソンによつて誘導されることから、眠期における酵素活性の低下が、飢餓あるいはホルモンによって引き起こされている可能性が考えられた。飢餓は酵素活性に影響しなかったが、結紮によりエクジソン合成組織を除表したところ、飢餓条件の個体に対して高い酵素活性が見られた。さらに、この結紮個体に対してエクジソン類似物を塗布したところ酵素活性の低下が見られたことから、糖利用酵素の制御が、栄養状態ではなくエクジソンによる内分泌調節機構を受けていることが示唆された。
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Research Products
(7 results)