2011 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫変態の分子機構-インスリン様ペプチドの作用と代謝制御
Project/Area Number |
22380034
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岩見 雅史 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (40193768)
|
Keywords | 昆虫変態 / インスリン / エクジソン / カイコガ / 血糖調節 / 個体発育 / スクロース / マルトース |
Research Abstract |
本研究では、カイコガをモデルに、発生に関与するインスリン様ペプチド(ボンビキシン)をはじめとするホルモンの幼虫から蛹期までの作用を、エクジソンや幼若ホルモンとの相互作用を念頭に、糖や脂質の代謝、生殖細胞への影響に焦点を当て解析することにより、動物界に共通する個体全体の代謝、発育調節、生殖システムを探ることを目的とするものである。 23年度は、昨年度の研究成果を論文としてまとめるとともに、ボンビキシンの機能を探るための分子基盤を確立するため、糖利用酵素の活性調節機構に注目した。幼虫から蛹への変態過程で、唯一の栄養源である桑の主要な二糖類のスクロースやマルトースを分解する糖利用酵素活性がどのような調節を受けるか調べた。終齢幼虫では、糖利用酵素の活性は発育段階と栄養状態に応じて調節されていた。マルトース分解酵素活性は、飢餓個体に比較し遊離腹部では高いレベルが保たれて、エクジソン類似物により抑えられた。一方、スクロース分解酵素活性はエクジソン類似物による影響を受けなかった。すなわち、ホルモン環境、発育段階、栄養状態により糖利用酵素それぞれ異なった調節を受けていることが示された。これは、(昨年度の研究で示した)前終齢幼虫から終齢幼虫に至る過程での糖利用酵素の制御が栄養状態ではなくエクジソンによる内分泌調節によるものと異なり、栄養状態に応じて制御機構が変化することを示している。 また、ボンビキシンが脳の神経分泌細胞で産生されていることから、活動している神経を同定し、神経回路可視化を行えるよう、神経活動依存的に発現する遺伝子の同定を行った。神経活動に伴って発現量が増加する遺伝子に注目し、DNAマイクロアレイスクリーニングにより新規な初期応答遺伝子を同定し、カイコガおよびショウジョウバエの脳で神経活動依存的に発現増加することを確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昆虫の発育がエネルギー面でどのように制御され、既知のホルモンであるエクジソンや幼若ホルモンがどのように作用しているかについて、糖利用酵素の活性調節をモデルに研究を進めることが出来たことは一定の成果と判断している。しかし、研究目的の一つである「プロボンビキシンCペプチドの幼虫から蛹期までの作用を、エクジソンや幼若ホルモンとの相互作用を念頭に、糖や脂質の代謝、生殖細胞への影響に焦点を当て解析する」については、プロボンビキシンCペプチドの作用検定系の確立にはまだ至っていないため、(1)ではなく(2)と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.糖利用酵素の活性調節機構について、現時点では、発育過程のすべてのステージで調節機構を解明したわけでないので、発育過程を追って、活性調節機構をホルモンや栄養状態との相互作用を念頭に解析する。 2.神経活動依存的に発現する遺伝子が同定できたため、ショウジョウバエやカイコガを用いて遺伝子組換え生物を作出し、人工的な神経活動を誘導した際、神経活動依存的な発現増加がみられるか確認する。また、この実験系により、昆虫種を問わず神経活動のマーカーとして利用できることを目指す。 3.引き続き、プロボンビキシンCペプチドの作用検定系の確立を目指す。
|
Research Products
(10 results)