2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22380036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
刑部 正博 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50346037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 達也 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70378818)
竹田 真木生 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20171647)
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Keywords | 紫外線 / アスタキサンチン / 光回復 / スカベンジャー / 休眠誘起 / カロテノイド / 休眠色 |
Research Abstract |
生体内においてエステル体としての存在が考えられたアスタキサンチンについて、コレステロールエステラーゼ処理による遊離体への変換と再回収による定量を試みた。その結果、ナミハダニでは全アスタキサンチン量のほぼ九割がエステル体として存在し、非休眠雌に比べ、休眠雌では数十倍のアスタキサンチンが生体内に蓄積していることが分った。また、従来は体色の変化と休眠はほぼ同一の現象としてとらえられていたが、生殖休眠は日長と気温の変化によって誘導されるが、体色の変化には成虫化後の摂食が不可欠であることが判明した。成虫休眠の誘起にはビタミンA前駆体でもあるβ一カロテンが必要であるが、それは親から卵へ導入されたものでも十分であると考えられているのに対して、体色の変化に必要なアスタキサンチン合成にはより多くのβ-カロテンが必要であり、そのために成虫化後の補充が不可欠と考えられる。 アスタキサンチンや3-ヒドロキシエキネノンなど、ケトカロテノイドの含有量が高いミカンハダニの卵は、β-カロテンやルテインなどを多く持つナミハダニ卵に比べて、UVB耐性が高いことが明らかになった。一方、これらハダニ類の捕食者であるカブリダニ類の卵はナミハダニ以上に紫外線感受性が高いことが確認された。そこで、カプリダニ雌成虫にこれらのハダニを捕食させたところ、餌種により紫外線耐性が変化した。 さらに、ナミハダニの光波長に対する誘因性と忌避の反応についてグリッド背景で、XYコンペンセーターで解析した。匂いや光に対する神経伝達因子としてGABAが考えられるが、ナミハダニGABA受容体の機能をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現した組換え体GABA受容体のさまざまな拮抗阻害剤、非拮抗阻害剤に対する反応を2電極ボルテージ・クランプ法で解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は遺伝子解析についても計画に含めていたが、カロテノイド代謝と休眠、カロテノイド組成と紫外線耐性などについて、当初の予想以上にさまざまな知見が得られつつある。このため、本研究の主体はカロテノイドを中心とし、それらを行動分析に結び付ける形で進行している。これらのことから、おおむね順調に進行していると考えて良いと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、最終年度に向け、紫外線耐性におけるカロテノイドの役割を評価して行く。その中で、当初の予定よりやや範囲を広げ、高温条件なども含め、複数の環境要因に対する防御機構としてのカロテノイドの役割も評価に加えたいと考えている。その評価の材料としてはハダニ自身だけではなく、カブリダニを評価の材料とすることも十分に可能であることが明らかになった。また、単に死亡率によって評価するだけではなく、紫外線損傷の生物共通の現象であるピリミジンダイマー産生の定量などを加え、紫外線の影響やそれに対する回復機構などをさらに深く追及する予定でもある。また、ナミハダニのゲノム計画が完了し、インドールアミン代謝系へのアクセスが容易になったので、これを利用してRNAiなどの手段を用いて機能解析の道が開けた。
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Research Products
(10 results)