2011 Fiscal Year Annual Research Report
水田土壌の微視的な酸化還元スポットの分布とカドミウム形態との関係
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22380046
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
山口 紀子 独立行政法人農業環境技術研究所, 土壌環境研究領域, 主任研究員 (80345090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 洋平 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (80436899)
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Keywords | 土壌圏現象 / カドミウム / 水田 / 酸化還元 / X線吸収スペクトル |
Research Abstract |
水田土壌中Cdは、イネの生育後期まで水田を湛水状態に保つことにより難溶化するため、水管理により玄米Cd濃度を低減することができる。しかし土壌の難溶性Cdがどの土壌構成成分に蓄えられるのか、どのような形態で存在するのか、その形態はどの程度安定か、が十分明らかになっていない。本研究は、シンクロトロン放射光源X線分析等を利用し、水田土壌におけるCdの難溶化と可溶化のメカニズムを解明することを目的とした。 堆肥、化成肥料を長期間連用してきた土壌カラムに鉄資材を添加し、水田条件で土壌を培養した。対象として鉄資材を添加しない土壌カラムの培養もおこなった。継時的に土壌溶液を採取し、溶存金属濃度を測定した。酸化的、還元的な層から土壌を採取し、Cd-K吸収端(26.711keV)のXANES測定を多素子SSDによる蛍光法でおこなった。 水田条件における培養では、還元の進行にともない、カドミウム溶出量が減少した。熱力学的平衡計算を根拠にした従来の研究では、還元状態におけるカドミウムの不溶化の原因は、硫化カドミウムが生成することであると考えられていた。しかし、XANESによる固相分析より、硫化カドミウムの生成割合は最大でも35%程度であることが示された。酸化的な上層土壌に比べ、還元的な下層で硫化カドミウムの存在割合が高い傾向があった。還元作用のある鉄資材の添加により、土壌の酸化還元電位が低く推移する傾向にあった。カドミウムの溶出量も低くおさえられ、特に下層土壌固相において硫化カドミウムの生成量が増加したものの、硫化カドミウムの生成割合は最大でも65%であった。堆肥の添加によって、土壌溶液へのカドミウム溶出量は少なくなったが、土壌中のカドミウムの形態には顕著な影響がなかった。還元による不溶化の要因は、硫化カドミウムの生成よりも、pHの上昇にともなう土壌鉱物へのカドミウム吸着量の増加、あるいは水酸化物沈殿の生成の寄与が大きい可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水田土壌の還元にともなうカドミウムの不溶化の原因が、硫化カドミウムの生成のみでは説明できない直接的証拠を提示することができた。マイクロビームを用いたカドミウムの局所分析に関しては、新規かつきわめて重要な結果を得ることができたため、今年度追試をおこない、妥当性を確認後、論文発表する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、水田土壌が酸化状態から還元にむかうプロセスに着目してきた。還元土壌における難溶性成分としての寄与が硫化カドミウムの寄与が低いことが示されたことから、硫化カドミウムは生成しにくいのか、あるいは生成したとしてもすぐに酸化してしまうのか、を整理して解釈する必要性がでてきた。今後は還元から酸化にむかうプロセスも評価できるような実験系も構築しつつ、予定していた実験を推進する。
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Research Products
(5 results)