2011 Fiscal Year Annual Research Report
マメ科植物との共生窒素固定の成立に必要な根粒菌の細胞機能
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22380048
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三井 久幸 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 准教授 (40261466)
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Keywords | 根粒菌 / 共生 / マメ科 / 窒素固定 / シグマ因子 / 発現制御 |
Research Abstract |
本年度は、既定方針である細菌細胞の基本体制に付加された共生特異的な役割を探るという流れで、アルファルファ根粒菌Sinorhizobium melilotiのrpoH変異株の解析を中心に研究を進めた。 野生株とrpoH1変異株それぞれに熱ショック処理を加えた後のトランスクリプトームを比較解析した結果、野生株において処理前と比べて発現上昇する297遺伝子のうち、rpoH1変異によってその上昇が止まる57遺伝子を見出した。そこには、RpoH1がプロモーターを認識して発現制御しているものと、別の因子を介して間接的に制御されているものの両方が含まれていると考えられる。ここで野生株とrpoH1変異株との間の発現強度の比が大きく異なる16遺伝子について、上流の塩基配列から共通に存在する配列を見出し、次に他の遺伝子についても同様の配列が存在するかどうか検索することによって、合計24オペロン(28遺伝子)の上流に推定プロモーターコンセンサスの存在を確認できた。そこで、その各遺伝子の破壊株を作製し、それぞれの表現型解析から、SMc00302遺伝子が共生窒素固定に必須であることを発見した。これは機能不明ながらFe-Sクラスター形成にかかわることがオペロン構造や他の細菌のオルソログの機能解析から推定される。すなわち、根粒菌の共生特異的に必須な役割を果たすFe-Sタンパク質の合成に関与することが示唆される。 その他、ミヤコグサ根粒菌Mesorhizobium lotiのcep変異株の解析では、そのサプレッサー変異候補の一つである二成分制御系遺伝子mlr2665-mlr2666-mlr2667の変異が共生能に及ぼす影響について、主に形態観察を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初方針に沿った研究を進めた結果、Fe-Sタンパク質合成に関与し、かつ根粒菌の共生成立に必須な役割を有する新規因子の発見など、期待どおりに根粒菌の共生メカニズムの理解に資する成果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初方針として掲げた計画 1)ミヤコグサ根粒菌のcep変異株の解析を通じた、宿主植物による共生根粒菌の認識機構の解析 2)アルファルファ根粒菌のシグマ因子RpoHの解析を通じた、根粒菌のストレス応答機構の共生成立に及ぼす、3)アルファルファ根粒菌のctrA変異株および温度感受性変異株の解析を通じた新規細胞内共生関連機能の同定を継続して進める。更に、前年までの成果を用い、Fe-Sクラスター形成機構、二成分制御系の解析も並行して実施する。
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Research Products
(3 results)