2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規脂質変換反応の探索と機能性脂質生産プロセスの開発
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22380051
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
櫻谷 英治 京都大学, 農学研究科, 助教 (10362427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 晃規 京都大学, 生理化学研究ユニット, 助教 (10537765)
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Keywords | エイコサペンタエン酸 / モルティエレラ / 油糧微生物 / 分子育種 / デスモステロール / 高度不飽和脂肪酸 / 相同組み換え / 微生物油脂 |
Research Abstract |
1.糸状菌Mortierella alpina 1S-4はアラキドン酸などの高度不飽和脂肪酸(PUFA)を蓄積する油糧微生物である。本菌での脂質代謝経路の解明及びより厳密な代謝制御によるPUFAの高生産を行うために、遺伝子ターゲッティング技術の開発を目指した。非相同組換えに関わるKU80をコードするku80遺伝子を相同組み換えにより破壊した株を用いて、PUFA生合成に関わるΔ5不飽和化酵素遺伝子の破壊を試みた。約40株の形質転換株の脂肪酸組成を分析したところ、Δ5不飽和化酵素活性の低下によるアラキドン酸蓄積量の減少が確認された。また、サザン解析の結果、本形質転換株におけるΔ5不飽和化酵素遺伝子への破壊用ベクターの挿入が示唆された。今後、本結果を参考に、ターゲッティング頻度の向上を目指す。 2.M.alpina 1S-4は培養温度が低くなるとエイコサペンタエン酸を蓄積する。これは、ω3脂肪酸不飽和化酵素が低温域で活性化されるためと考えられてきた。酵母発現系を用いた本酵素遺伝子の機能解析を行ったところ、2つの新たな未知脂肪酸を見いだした。同定の結果、2つの未知脂肪酸はhexadecatrienoic acid (9cis, 12cis, 15-16:3)とhexadecadienoic acid(9cis, 12cis-16:2)であることがわかった。このことから本酵素はω3位だけでなくΔ12位にも二重結合を導入することがわかった。さらに、様々な脂肪酸の変換効率を調べたところ、低温ではなく通常の培養温度でも本酵素活性による産物を検出することができた。基質・酵素複合体の温度変化による構造特異性に興味がもたれる。 3.M.alpina 1S-4はPUFAだけでなく、デスモステロールなどの希少ステロールを蓄積する。sterolacyltransferase(SAT)は遊離ステロールとアシルCoAからステロールエステルを合成する反応を触媒する。これまでに酵母において内在性SATの過剰発現や欠損により菌体内ステロールとステロールエステルの存在比が変化することが報告された。そこで、M.alpina 1S-4のSATホモログ遺伝子(msat1)を本菌株よりクローニングし、msat1過剰発現株でのステロール生産性を評価した。総ステロール量を分析したところ過剰発現株はホスト株にくらべ約1.6倍のステロールを生産することが分かった。次に、酵母発現系を用いたmsat1の機能解析を行ったところ、MASAT1はエルゴステロールを基質とすることや、添加したPUFAをステロールエステルへ変換することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.油糧微生物M.alpina 1S-4の相同組み換え系を開発することに成功した。2.PUFA生合成に関わる酵素遺伝子の新たな機能性を見い出した。3.PUFA生合成に関わる酵素遺伝子の過剰発現により、アラキドン酸やエイコサペンタエン酸などの生産性を向上させることに成功した。4.デスモステロールなどの希少ステロールの生合成経路を明らかにし、個々の遺伝子過剰発現と遺伝子転写抑制を行うことによりデスモステロールをはじめとする希少ステロールの生産性を向上させることに成功した。以上の研究成果は研究計画に沿ったものであり、「研究目的」の達成度は順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、研究計画の通り進めていく。特に、相同組み換え系の効率をさらに向上させ、より厳密な代謝制御による選択的なPUFA生産菌の育種を目指す。そのために、非相同組み換えに関わる酵素遺伝子を網羅的に破壊し、より高頻度で相同組み換えが起こる宿主株の開発を目指す。得られた脂質高生産株の培養条件の至適化により、生理活性評価実験に供せられる量の生産を実現し、得られたサンプルの機能性評価研究を展開し、新規機能性脂質の創製を図る。
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Research Products
(6 results)