2010 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性サイトカインの情報伝達の分子メカニズムの解明とバイオプローブによる制御
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22380060
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
片岡 孝夫 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (20242307)
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Keywords | シグナル伝達 / 生理活性 / 免疫学 / 薬理学 |
Research Abstract |
炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor-α(TNF-α)やinterleukin-1α(IL-1α)は、転写因子nuclear factor κB(NF-κB)のシグナル伝達経路を活性化し、intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)等の様々な遺伝子の発現を誘導する。トリエン-アンサマイシン(triene-asnamycin)系化合物の一つであるマイコトリエニンII(mycotrienin II)は、ヒト肺がん腫A549細胞において、IL-1αに比べてTNF-αによって誘導される細胞表面のICAM-1発現を強く阻害した。マイコトリエニンIIは、DNA合成やRNA合成に影響しない条件下でタンパク質合成を選択的に阻害し、無細胞翻訳系においても阻害活性を示した。幾つかのトリエン-アンサマイシン系化合物は、マイコトリエニンI1と同様に、ICAM-1の発現誘導および無細胞翻訳系を阻害した。以上の結果から、トリエン-アンサマイシン系化合物は、タンパク質合成阻害剤として、炎症性サイトカインによるICAM-1発現を阻害することが明らかになった.サイトトリエニンA(cytotrienin A)は、マイコトリエニンIIの構造類縁体である。サイトトリエニンAは、マイコトリエニンIIと同様に、IL-lαに比べてTNF-αによる細胞表面のICAM-1の発現を選択的に阻害した。サイトトリエニンAは、TNFα-converting enzyme(TACE)によるTNFレセプター1のエクトドメインシェディングを誘導した。TACE阻害剤TAPI-2は、ICAM-1発現に対するサイトトリエニンAの選択的な阻害活性を抑制した。さらに、MEK阻害剤U0126およびp38MAPキナーゼ阻害剤SB203580の存在下では、サイトトリエニンAによるTNFレセブター1のエクトドメインシェディング、並びにICAM-1発現に対するサイトトリエニンAの選択的な阻害活性が抑制された。以上の結果から、サイトトリエニンAはERKとp38 MAPキナーゼの活性化を介して、TNFレセプター1のエクドドメインを誘導し、TNFαによるICAM-1発現を選択的に阻害することが明らかになった。
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Research Products
(18 results)