2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネの基礎的病害抵抗性を制御する鍵転写因子の機能の解明
Project/Area Number |
22380066
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山根 久和 東京大学, 生物生産工学研究センター, 教授 (80090520)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 憲典 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (20312241)
|
Keywords | イネ / 植物免疫 / WRKY型転写因子 / b ZIP型転写因子 / シグナル伝達 / ファイトアレキシン / 基礎的病害抵抗性 / エリシター |
Research Abstract |
本研究は、イネの病害抵抗性発現において、特に重要な機能を果たしていると考えられるOsWRKY53(抗菌性タンパク質の生産に関与する分子スイッチの一つ)とOsTGAP1(ファイトアレキシン生合成敬全体を制御する転写因子)の2種について、ChIP-sequenceにより、下流標的遺伝子の網羅的同定を行うとともに、当該転写因子自体の発現・作用機構の解明を行い、OsWRKY53とOsTGAP1を介した基礎的病害抵抗性発現機構の総合的理解を目指すものである。平成23年度は、OsWRKY53については、OsWRKY53の野生型、恒常的活性型(擬似リン酸化体)の過剰発現体培養細胞(エリシター処理、未処理)のトランスクリプトーム解析を行い、翻訳後リン酸化が下流遺伝子の発現へ及ぼす影響を解析した。その結果、標的遺伝子の中に、恒常的活性型培養細胞でエリシター処理後の発現誘導率が高まる遺伝子グループが存在することが示された。また、恒常的活性型イネ植物体において、野生型の過剰発現体イネよりも有意にいもち病菌抵抗性が増強されたラインが存在することも示された。OsWRKY53と相互作用するタンパク質の酵母two-hybrid法等による探索も行っているが、現在のところ、相互作用因子を取得するには至っていない。 一方、イネのOsTGAP1については、ChIP-sequenceを行ってゲノム上の結合領域を網羅的に同定するとともに、過剰発現体培養細胞のトランスクリプトーム解析の結果を考え合せることにより、OsTGAP1の標的遺伝子を網羅的に同定した。また、OsTGAP1と相互作用するタンパク質の酵母two-hybrid法等による探索を行った。その結果、いくつかの相互作用因子の同定に成功したが、これらのうちには、ENT-domain containing proteinをコードする遺伝子が含まれていた。トウモロコシにおいてENT-domain containing proteinはヒストン修飾に関与するという報告があったため、OsTGAP1の標的遺伝子OsKSL4の遺伝子領域および上流域のヒストン修飾を解析したところ、翻訳開始点付近の領域においてキチンエリシター処理により、ヒストンH3K9/14のアセチル化が誘導されることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
恒常的活性型OsWRKY53植物体のいもち病菌抵抗性検定を行うなど当初の計画以上に進展している部分とOsWRKY53の相互作用因子の探索のように遅れている部分がある。全体としてはおおむね順調に進展していると考えてよい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、ほぼ想定通りに進行しており、研究計画の変更等は必要ないものと考えている、最終年度は、研究成果の公表にも努めたいと考えている。
|