2011 Fiscal Year Annual Research Report
植物の誘導抵抗反応に対する昆虫の対抗適応の分子基盤
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22380068
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 直樹 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30293913)
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Keywords | 植物の誘導抵抗反応 / 対抗適応 / 昆虫-植物間相互作用 / エリシター / 害虫管理 / volicitin |
Research Abstract |
申請者は、昆虫の唾液成分volicitin [N-(17-hydroxylinolenoyl)-L-glutamine]により誘導される植物の抵抗性に注目し、特に昆虫類に見出されるvolicitin類の構造の多様性、その生合成経路の解明および植物における反応性の違いをテーマに研究を進めている。 ・新規volicitin類縁体のエリシター活性 平成22度申請者は、タバコスズメガ唾液成分からトウモロコシに揮発成分を放出させる新規エリシターとして、18位が水酸化されたN-(18-hydroxylinolenOyl)-L-glutamine [180H-volicitin]を同定した。平成23年度はこの新規エリシターの合成品を用い、揮発成分放出活性をトウモロコシで調べた。その結果、トウモロコシではvolicitinが180H-volicitinよりも約三倍活性が強かった。 ・脂肪酸-アミノ酸縮合酵素の精製 申請者は、本科研費により購入したタンパク質精製システムを最大限に活用し、カイコ腸管からリノレン酸とグルタミンを縮合する酵素の精製を進めている。現在、電気泳動ゲルで2本のバンドまで精製した。それぞれを切り出し、酵素処理後ペプチド断片をLCMS-IT-TOFで解析した。MSMSイオンサーチでタンパク質Aは候補となるタンパク質が数種類得られたが、どれもアミド結合に関与するタンパク質ではなかった。一方、タンパク質Bはtrypsin-like proteaseとペプチド配列が一致したが、相同率は3%と低かった。高濃度で検出されたにもかかわらず、他に配列が一致するタンパク質は得られなかったので、タンパク質Bはデータベース上に存在しない新規タンパク質であると推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規の180H-volicitinを合成し、その揮発成分放出活性をトウモロコシで調べたところ、volicitinと180H-volicitinではエリシター活性が異なった。トウモロコシでは水酸基の位置を識別していると示唆された。一方、volcitin類の生合成の第一段階であるリノレン酸とグルタミンの縮合反応を触媒する酵素の精製方法を確立した。現時点で得られている結果では、目的の酵素は新規タンパク質である可能性が高い。今後も縮合酵素の精製を進め、同酵素のアミノ酸配列を決定する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、トウモロコシ以外の植物でも、volicitinと180H-volicitinのエリシター活性を比較し、エリシター活性と植食者の食性との関係を調べる。一方、本科研費により購入したタンパク質精製システムにより、リノレン酸とグルタミンの縮合反応を触媒する酵素の精製方法を確立した。カイコ腸管からリノレン酸とグルタミンを縮合する酵素の精製を進める。また、グルタミン酸型volicitinに注目し、グルタミン酸型volicitinを主成分として持つコオロギ、ショウジョウバエ、タバコスズメガを用い、その生合成経路を確認する。以上の研究から、植物の誘導抵抗性に対する昆虫の対抗適応の分子基盤を解析する。
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