2011 Fiscal Year Annual Research Report
トリプトファンの肝タンパク質合成促進機能の解析と摂取の有効性・安全性の評価
Project/Area Number |
22380071
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
吉澤 史昭 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10269243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蕪山 由己人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20285042)
橘 哲也 愛媛大学, 農学部, 准教授 (80346832)
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Keywords | アミノ酸 / トリプトファン / 肝タンパク質合成 / 脳・神経 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
18時間絶食ラットにトリプトファン(Trp)溶液及び生理食塩水(対照)を経口投与し、Trpの肝タンパク質合成促進機能および脳(扁桃体)に対する影響を解析した。 1.Trpの肝タンパク質合成促進シグナルの特徴の解析 (1)発現量が変化するタンパク質の解析(蕪山):Trp投与3時間後に摘出した肝臓から常法に従って抽出したタンパク質を、二次元電気泳動法を用いて分離した結果、Trp投与によって2つのスポットの増加と2つのスポットの減少が確認された。これらのスポットを質量分析法により同定した結果、発現が減少したスポットのうちの1つはBCKDHEIalphaと同定された。 (2)個々のタンパク質の合成速度の測定(吉澤、蕪山):Trpによって発現量が変化するタンパク質のスポットをゲルから切り出して、そのスポットに含まれる安定同位体量の測定を試みたが、個々のタンパク質の合成速度を算出するには至らなかった。 2.肝タンパク質合成促進シグナルの伝達経路の概要の解明(吉澤):インスリンはPKBの活性化を介してmTORシグナル伝達系を刺激してS6K1と4E-BP1のリン酸化を増加させることが知られているが、TrpはPKBを介さずmTORシグナル伝達系を刺激して、S6K1や4E-BP1に作用して翻訳開始段階を刺激することでタンパク質合成を促進することが明らかになった。 3,Trpの脳に対する影響の解析(橘、吉澤):Trpを投与しても扁桃体の細胞間隙5HT量は変化しないが、5HTの代謝産物である5HIAAは増加する。5HTを5HIAAに代謝する酵素であるMAOの阻害剤をラットに腹腔内投与し、その直後にTrpを経口投与すると5HT量が劇的に増加したことから、5HIAA量が増加したにもかかわらず5HT量が増加しなかったのは、MAOによる5HTの代謝が迅速に行われたためであることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度計画したすべての研究に予定どおり着手したが、個々のタンパク質の合成速度の測定法が確立できていない。また、トリプトファン摂取がラットの基本的性状と行動に与える影響についての実験も、予備実験が終了した段階で、全体として研究計画に若干の遅れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗状況に若干の遅れはあるものの、当初の計画通りに研究を推進することで、本研究の目的を達成できるものと考える。来年度は当初計画した5つの研究項目のうち、未着手の「トリプトファンの肝タンパク質合成促進機能の医用利用の可能性の検索」に重点的に取り組む。
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Research Products
(2 results)