2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22380074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伏木 亨 京都大学, 農学研究科, 教授 (20135544)
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Keywords | GPR120 / 脂肪酸 / 嗜好性 / 有郭乳頭 / イメージング |
Research Abstract |
GPR120が口腔内での脂肪の受容に関与することを検証するためにGPR120ノックアウトマウスを作製した。ノックアウトマウスはトランスジェニック株式会社に依頼し、行動実験に適したBALB/c系統で作製した。前年度に引き続いて、野生型マウスにおいて好まれるリノール酸などの既知リガンドへの嗜好性がGPR120ノックアウトマウスにおいて低下するか否かをリック行動試験により評価した。また、マウス舌有郭乳頭から味細胞を単離し、遊離カルシウム指示薬を細胞内に導入し、脂肪酸刺激によって応答するかをカルシウムイメージング法により調べた。 GPR120ノックアウトマウスの腸管粘膜や舌上有郭乳頭におけるGPR120のmRNA発現が完全に消失していることをRT-PCR法により確認した。標準飼料で飼育したマウスの体重増加、摂食量はノックアウトと野生型との間で差は見られなかった。GPR120ノックアヴトマウスを用いたリック試験を行ったが、ノックアウトマウスは既知リガンドへの嗜好性は低下することなく、野生型マウスとほぼ同様の嗜好性を示した)。さらに低濃度での脂肪酸を用いてリック試験を行ったが、差は見られなかった。また、脂肪酸希釈溶液をミネラルオイルから0.3%キサンタンガムに変更し、再度試験を行ったが、野生型とGPR120KOマウスとで差は認められなかった。 マウス舌上皮から単離した有郭乳頭味細胞を用いてカルシウムイメージングを行った。リノール酸やリノレン酸、エイコサペンタエン酸などの長鎖不飽和脂肪酸刺激により一部の味細胞で濃度依存的なカルシウムレスポンスが確認できた。脂肪酸のカルボキシル基がメチル化された脂肪酸誘導体刺激では細胞は反応しなかった。一方、GPR120ノックアウトマウスから単離した有郭乳頭味細胞でも長鎖不飽和脂肪酸刺激によって一部の細胞がカルシウム応答することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
作製したノックアウトマウスは、行動実験に適したBALB/c系統であり、より生理的な条件下で油脂に対する嗜好性を評価することができると期待された。しかし、GPR120ノックアウトマウスは野生型マウスと脂肪酸に対する嗜好性が変わらなかった。また、ノックアウトマウスから単離した味細胞でも長鎖脂肪酸刺激によってカルシウムレスボンスが見られた。このことから、口腔内においてGPR120だけが脂肪酸受容体として機能しているわけではなく、CD36や、GPR40、もしくはその他の受容体が相補的に機能している可能性が示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪分子の化学受容機構には複数の受容体、細胞内情報伝達経路が関与することが推察される。今後はGPR120ノックアウトマウスやCD36ノックアウトマウスから単離した有郭乳頭味細胞を用いて、脂肪酸応答後の細胞を採取し、Single Cell RT-PCR法により、脂肪酸応答特性と遺伝子発現プロファイルを解析する予定である。
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