2010 Fiscal Year Annual Research Report
抵抗性の急激な増加がマツ材線虫病の流行に及ぼす影響の解析
Project/Area Number |
22380081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富樫 一巳 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30237060)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 孝治 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター, 研究員 (40415039)
杉本 博之 東京大学, 山口県農林総合技術センター・林業技術部, 専門研究員 (00522244)
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Keywords | マツノザイセンチュウ / 抵抗性 / 毒性 / 媒介昆虫 / IPM / ニセマツノザイセンチュウ / マツノマダラカミキリ / スクリーントラップ |
Research Abstract |
毒性の異なる2線虫アイソレイトの密度を変えて6家系のクロマツ苗木に接種した。その結果,50%枯死率を引き起こす平均線虫密度は1085と3123であった。2アイソレイトに対する抵抗性の程度には家系間で正の相関があったが,有意ではなかった。接種数を一定にして2家系のクロマツの発病時期を調べたところ,毒性の強いアイソレイトは発病までの時間が短い傾向を示した。線虫の毒性と媒介昆虫への乗り移り能力の関係の間には有意な関係はなかった。もっとも羽化した昆虫は少なかった。毒性の差を顕著にするために,病原線虫Smb(遺伝子をBxと略記)と非病原線虫Srf(遺伝子をBmと略記)の雑種由来線虫を実験に用いたところ,SrfとSmb♀×Srf♂由来(核Bm,細胞質Bx)の線虫は昆虫に乗り移ることができなかったが,SmbとSrf♀×Smb♂由来(核Bx,細胞質Bm)の線虫は平均210頭と43頭が媒介昆虫に乗り移った。さらに興味深いのは,媒介昆虫から分離された雑種由来個体群の約400頭の線虫は全てBmのrDNAしか持っていなかった。これらのことから,病原線虫の毒性と昆虫への乗り移りに関わる遺伝子は核にあること,昆虫への乗り移りのときに大きな選択が働くことが示された。スクリーントラップを用いた簡易な媒介昆虫密度調査法の数学モデルを作成した。木に衝撃を与えて落下した昆虫数とトラップの捕獲成虫数には正の相関があった。媒介昆虫は線虫を摂食痕から健全木に,産卵痕から枯れ始めた木に伝播する。これらの関係を使って野外における線虫の伝播力を推定する式を作ったが,それを当てはめる林のデータの採取はうまく行かなかった。
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