Research Abstract |
林分内の媒介昆虫(マツノマダラカミキリ成虫)の垂直分布を明らかにするために,樹高13mの林の林冠内と林冠下に,誘引物を含まない粘着式スクリーントラップを設置した。林冠下より林冠内で6倍多くのカミキリが捕獲され,その中では雄の割合が高かった。木に衝撃を与えてカミキリを捕獲すると性比は1:1であったので,雌より雄の飛翔活動性が高いことが示された。また,これらの結果は媒介昆虫の密度推定をおこなう場合の重要な情報となった。 マツノザイセンチュウの毒性と媒介昆虫への乗り移り能力の関係を明らかにするために,九州で最近発見された極めて毒性の強い線虫アイソレイトSc-9,強毒性アイソレイトT-4および無毒性アイソレイトOKD-1を用いて実験をおこなった。その結果,毒性の強い順にカミキリの平均線虫保持数が多くなった。3アイソレイトとも,蝋室周囲の線虫数が多くなるにつれて,保持線虫数は多くなった。また,OKD-1よりSc-9とT-4の線虫1頭あたりの乗り移り確率は高かったが,Sc-9とT-4のそれに違いはなかった。材内の線虫密度はSc-9がT-4より有意に高いため,毒性と平均保持線虫数の間に正の相関が生じたことが分かった。 マツの発病の閾値と病原線虫の毒性の関係を明らかにするために,毒性の異なる病原線虫アイソレイト(唐津3と宮津)をそれぞれ異なる個体数(316,1000,3162,1000頭)で抵抗性クロマツ6家系と精英樹クロマツ2家系の1.5年生実生苗に接種した。その結果,唐津3は接種頭数の増加に伴い26,38,50,66%の苗を枯死させた。一方,宮津は0,2,9,16%の苗を枯死させた。各家系のLD50は,唐津3の場合246頭(精英樹国東131)~27324頭(波方37),宮津の場合21471頭(精英樹国東131)~2380690頭(波方37)であったと推定された。
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