2012 Fiscal Year Annual Research Report
広葉樹の病害心材形成機構に関する基礎的、応用的研究
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22380085
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山本 福壽 鳥取大学, 農学部, 教授 (60112322)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | コナラ属 / ナラ枯れ / Raffaelea quercivora / 傷害心材 / エチレン / ジャスモン酸 / Aquilaria / 沈香 |
Research Abstract |
カシノナガキクイムシによる穿孔とRaffaelea quercivoraの感染による傷害(病理的)心材形成における植物ホルモンの役割と傷害心材形成メカニズムを明らかにすることを目的とし、萌芽後約10年生のコナラ成木42本を選定して、サリチル酸ナトリウム(SA-Na)、ジャスモン酸メチル(Me-JA)、およびエスレル(Et)の樹幹注入を行った。処理区はSA-Na0ppm, 100ppm, 1000ppmとMe-JA 0ppm+Et 0ppm, Me-JA 1000ppm+Et1000ppmを組み合わせた計6処理区とした。薬剤注入は2012年8月30日と9月3日に100ml入れた点滴びんの先端を注入孔に差し込むことによって行った。試料は10月31日に採取し、材の解析によって変色体積、縦横断面の変色面積、および変色長を求めた。この結果、SA-Naのみでは横断面の変色に増加傾向が見られた。Me-JA+Etのみの処理区では変色面積は有意に増加した。すべての混合区ではMe-JA+Et処理区よりも変色面積が減少する傾向が見られた。 苗木を用いて、コナラ節のコナラとクヌギ節のアベマキのR. quercivoraの感染に対するエチレン生成能の差異を調べた。実験は3年生のコナラ、アベマキのポット苗を用いて行った。繰り返しは7本である。鳥取県林業試験場で分離・培養したナラ菌(Na-T1)をこれらの苗木に接種し、エチレン生成とチロース発達におよぼす影響を調べた。この結果アベマキはコナラに比べて感染初期に多くのエチレンを生成することが確認できた。さらにタイ王国においてAquilaria属樹種を用いた沈香生産の促進実験を樹幹注入法によって行い、これまでのペースト法と同様にMJ、Et、およびサリチル酸ナトリウムの組み合わせ処理によって顕著な沈香成分を含む傷害心材形成の促進効果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カシノナガキクイムシによる穿孔とRaffaelea quercivoraの感染による傷害(病理的)心材形成における植物ホルモンの役割と傷害心材形成メカニズム、およびAquilaria属樹幹内の沈香の形成には共通してエチレンとジャスモン酸の相互作用が認められることが明らかになり、重要な新知見を得ることができた。また沈香の生産に関しては、新たな特許を取得することができた。(開放特許情報DB登録番号:L2011006155、発明の名称:「沈香の生産方法、および沈香生成促進剤」、公開番号:特開2013-028677、公開日:2013年2月7日、特許権者:国立大学法人鳥取大学、代表発明者:山本福壽)。 しかしながら、多くのデータを得たが、論文作成の進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度の研究は、これまで予備的な研究のみを行ったエチレンとジャスモン酸生合成に関わる遺伝子の解析に着手し、研究を完結させる。また複数の樹木を用いて、これらの物質の相互作用の普遍性を検討する。さらに沈香研究については、量産に向けた質の制御に関わる研究を展開する。さらに投稿論文をまとめる。
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Research Products
(4 results)