2011 Fiscal Year Annual Research Report
木質細胞壁全溶解システムを用いた細胞壁各構成成分の性状と相互作用の解明
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22380093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30183619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 朝哉 東京大学, 大学院・農学生命研究科, 講師 (10359573)
秋山 拓也 東京大学, 大学院・農学生命研究科, 助教 (50553723)
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Keywords | リグニン / ヘミセルロース / シリンギル / グアイアシル / キシラン / マンナン / 塩化リチウム / 細胞壁 |
Research Abstract |
研究初年度(10年度)の研究において、木質細胞壁を構成する多糖類の構造とリグニン構造の関係を多様な樹種間で比較した結果、リグニン構造の指標としてシリンギル比をとった場合、シリンギル比が高くなるにつれ、セルロースの量は影響を受けないが、ヘミセルロースの量は増加すること、また、ヘミセルロースのうちキシランの割合が明瞭に増加することがわかった。また、木質細胞壁の溶解法に関して更なる研究を続けた結果、新しい溶解法を見出す事ができた。その成果を受けて、11年度は、全細胞壁溶解法を用いて、細胞壁構成成分を非破壊的に分画する試みを行った。分画の方法としては、stepwise extractionとindividual extractionの二通りを行った。ともにDMSO中のLiCl濃度を0から6%まで段階的にあげた溶液を用いるが、前者は、LiCl濃度の低い溶液に溶解しなかった部分をLiCl濃度を上げた溶液に溶解させ、その非溶解部分をさらにLiCl濃度を上げた溶液に溶かす、と言う逐次分画法であり、後者は、LiCl濃度が異なったDMSOへの溶解部分と非溶解部分を、各LiCl濃度ごとにそれぞれ別々に調製する分画法である。 この二つの分画方法を、ブナおよびアカマツに適用し、得られた各フラクションの多糖類の構造、リグニン構造を厳密に分析した。その結果、広葉樹においては、リグニン構造のシリンギル比を横軸にすえることにより、ヘミセルロースのキシラン/マンナン比との間にきわめて明瞭な相関が存在すること、そして、この相関を、異なった樹種の比較にも広げた結果、キシラン/マンナン比とシリンギル比の相関は、シリンギル比が0である針葉樹を含めても成り立つことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当研究室で開発した細胞壁溶媒系に加えて、さらに、植物細胞壁を溶解させる別の新しい溶媒系を見出し、それを用いて細胞壁を分画する手法をこの研究に適用することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた細胞壁各分画の化学構造分析を厳密に追及してきたが、今後、それらに加えて、多角度レーザー光散乱光度計やフォトダイオードアレイなど多様な検出器を用いたサイズエクスクルージョンクロマト分析によって、全細胞壁溶液、あるいは、それから非破壊的に得られた各フラクションを構成する高分子のコンフォーメーション解析や成分間の相互作用の解析などを行う。
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Research Products
(5 results)