2011 Fiscal Year Annual Research Report
左ヒラメと右カレイの謎と健苗育成に向けた稚魚発生システムの解明
Project/Area Number |
22380104
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 徹 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (70344330)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 勇人 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (40569729)
宇治 督 独立行政法人水産総合研究センター, 養殖研究所, 研究員 (40372049)
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Keywords | 異体類 / 変態 / 増養殖 / 発生 / ヒラメ / 色素胞 / 脳内分泌 |
Research Abstract |
本研究では、増養殖種苗の生産技術開発に資することを目的として、ヒラメ・カレイ類に固有な眼と体色の左右非対称性形成の分子制御機構を解明するとともに、飼育環境要因(栄養素、日照等)により誘起される眼位や体色異常の発生メカニズムを解明する。23年度は日照と脳内分泌、色素異常との関連について解析した。24時間照明下でヒラメ仔魚を2週間飼育すると、視交叉上核のドーパミン(下垂体でのα-MSH発現と分泌を抑制する)の合成が強く抑制された。MCHニューロンへの影響は認められなかった。これらにより脳下垂体ではα-MSH合成が活性化されるが分泌は抑制されると言うアンバランスが生じ、過剰なα-MSH蓄積によりメラノトローフが膨満した。そのまま変態まで飼育を続けると、白化と黒化が高率に発生した。これらの現象について、MCHによりα-MSH分泌が抑制され続けた場合に白化が発生し、過剰に蓄積したα-MSHが血中に放出された場合には黒化となるものと解釈した。 体色の左右差形成に関与する候補遺伝子をスクリーニングするために、マウスで色素形成に関与することが分かっている50種類の遺伝子、およびメダカdouble analの原因遺伝子zic1の発現をトラフグの背側皮膚、背側筋肉、腹側皮膚、腹側筋肉で比較した。背側皮膚と背側筋肉でのみ発現する遺伝子としてzic1、背側皮膚で強く発現する遺伝子としてメラノコルチン受容体メンバーの1種類、甲状腺ホルモン転換酵素dio2が見つかった。このうちzic1は、ヒラメにおいて仔魚期にはトラフグと同様に左右の背側筋肉と皮膚で発現したが、変態期に左の背腹の筋肉と皮膚に発現がシフトすることが分かった。メダカでは背側に発現するzic1が色素胞の背側への分布を誘導することが知られており、ヒラメではzic1発現の切り替えが体色の左右差形成に関与している可能性が予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、眼位の調節機構と異常の発生機構、ヒラメとカレイの眼位を逆にする発生機構を解明した。本年の研究により、脳内分泌と体色形成との関係、体色の左右差形成解明に向けての重要な知見を得ることができた。研究の進捗状況は計画よりも早く進んでおり、自己評価を(1)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究によりzic1が、体色の左右差形成制御の候補遺伝子としてスクリーニングされたので、無眼側への強制発現等の実験によりzic1の機能を明らかにする。これまで得られた成果のうち、雑誌にまだ掲載していないものについて、至急論文にまとめて投稿するよう努める。
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Research Products
(15 results)