2010 Fiscal Year Annual Research Report
特殊なアミノ酸を用いて深海生物が硫化水素を無毒化するしくみ
Project/Area Number |
22380107
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 広滋 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (60323630)
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Keywords | 特殊環境 / 生理学 / 共生 / 適応 / 深海 |
Research Abstract |
深海の熱水噴出域に生息する生物の、熱水中に含まれる硫化水素の毒性に対する適応機構を、熱水噴出域固有生物の組織に特異的に蓄積しているチオタウリンと、その前駆体であるヒポタウリンいう特殊なアミノ酸を手がかりとして解明を試みている。 平成22年5月に、海洋研究開発機構の深海探査艇を用いて、伊豆小笠原海域の明神海丘にから熱水域固有種であるシチヨウシンカイヒバリガイを採集し、採集した貝を、水槽中で硫化物および浸透圧変化に24,48時間実験的に曝露させた後解剖して凍結した。また同種よりヒポタウリン合成に関わる酵素である二つの酵素の遺伝子の部分配列を単離した。今後、それぞれの全長配列の単離を行うとともに、まだ単離出来ていない酵素の遺伝子についてもスクリーニングを続ける予定である。さらに、環境条件に伴う両遺伝子の発現の変化を調べるために、リアルタイムPCR法によるmRNA定量系を確立し、上記の試料について解析する予定である。一方、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるヒポタウリンやその他の前駆物質の分析系を検討した。システインスルフィン酸等の前駆体やタウリン、ヒポタウリンを分離できる条件を検討し、それぞれのピークを分離することができるようになった。そこで、平成23年6月に再度研究航海を実施してシチヨウシンカイヒバリガイを採集し、各組織のHPLCによる分析を実施した。しかし、前処理の過程で一部の物質が変化してしまう問題が生じ、目的のピークを明確に捉えることができなかった。前処理条件を現在検討中である。
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Research Products
(7 results)