Research Abstract |
平成22年度から23年度にかけて,市販自脱コンバインの脱穀部に,穀粒貯留タンクから穀粒供給オーガからなる循環装置を設け,1番オーガ,2番オーガ,揺動選別装置上に流量センサを設けた選別実験システムを構築した。平成23年度は,この選別実験システムに穀粒のみを投入し,2番還元率,穀粒損失率の測定実験を行うとともに,穀粒収支モデルの検討を行った。 これまでの穀粒収支モデルは,機械条件(揺動選別装置におけるシーブ開度)が一定の場合には,流量変化に関わらず2番還元率が一定になるとされてきたが,穀粒のみを投入した場合には,機械条件が一定の場合でも,穀粒流量によって2番還元率と穀粒損失率が変化することが明らかとなった。すなわち,穀粒流量が少ない場合には,2番還元率,穀粒損失率が高くなり,穀粒流量が増加するにつれ,2番還元率や穀粒損失率が低くなることが判明した。このことから,穀粒収支モデルにおける2番還元率を,揺動選別装置流量の関数とすることによって,精度の高い選別システムのシミュレーションが可能になった。 一方,穀粒の相互作用と流下特性への影響について,平成23年度は穀粒の流動性の指標となる安息角を再現するDEM解析を試みた。これまで,穀粒を球と見倣して解析を行った例がみられるが,その球体形状から転がりが発生するため,安息角の生成などを正確に再現することが困難であった。 そこで,複数の球を剛体結合して一粒の穀粒を表現する扁平穀粒をDEMモデルとして導入し,シミュレーションを行った。複数粒子結合モデルは,2,5,7粒を対称に配置した形状について検討を行い,粒子数が増加すればより実際の穀粒に近い安息角を再現できるものの,計算時間が長く結果に大きな差が見られなかったため,利便性の高い5粒子によるモデルが適当であるという結果を得た。 これらの研究成果は,複雑なコンバイン内部の穀粒の流れを解明する上で貴重であり,コンバインの性能予測やPFへの適用において極めて重要な研究成果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
穀粒収支モデルについて,2番還元率を揺動選別装置流量の関数で表現することで,精度の高いシミュレーションが可能になったこと,穀粒の相互作用と流下特性について,5粒子剛体結合による安息角シミュレーションが可能になったことから,本研究手法が適切であることが明らかになり,今後の研究成果も期待できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,藁屑の物理特性をモデル化した試料を穀粒に混入し,揺動選別装置上での分離と流下が困難になる状況について実験を進める。実験では,穀粒質量に対する混入率を変化させながら2番分配率と選別損失分配率について明らかにする。また,藁屑混入に関して新たなパラメータ導入を検討し,再現性の高いシミュレーション結果が得られるよう穀粒収支モデルを発展させる。 また,DEM解析において,複数粒子結合法を用いた藁屑の再現を行い,扁平穀粒と藁屑の混在する状況での安息角について,妥当性について検討を行う。また,実験との比較・照査から,穀粒と藁屑の流下特性に与える影響について検討すると共に,脱穀部内部の各部調節などの機械条件について,流下特性に基づく考察を行う。
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