2011 Fiscal Year Annual Research Report
筋肥大・再生に伴う運動神経ネットワーク再構築の分子基盤
Project/Area Number |
22380145
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辰巳 隆一 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (40250493)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古瀬 充宏 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (30209176)
水野谷 航 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (20404056)
|
Keywords | 畜産学 / 食肉 / 骨格筋 / 筋幹細胞 / 運動神経 / 神経軸索ガイダンス因子 / Sema3A / 細胞増殖因子 |
Research Abstract |
筋肥大・再生の基盤である「運動神経ネットワーク(神経末端の筋線維への再接着)の再構築を支配する分子機構」を明らかにすることを目的としている。これまでの研究により、肝細胞増殖因子(HGF)および線維芽細胞増殖因子2(FGF2)の濃度依存的に筋幹細胞(衛星細胞)が神経細胞ガイダンス因子Sema3Aを合成・分泌することを見出し、「衛星細胞が運動神経ネットワークを能動的に制御している」という先駆的な細胞間コミュニケーションモデルを提起した。本年度ではこれを更に発展させるため、Sema3A発現を抑制する分子基盤を追究した。衛星細胞の初代培養系を用いて先ず、Sema3Aの発現を抑制する因子を検索した。種々の細胞増殖因子のなかでTGF-β2,3に強い抑制効果が認められ、それぞれ40pM,8pMで最大の効果を発揮する顕著な濃度依存性を示した。これらの最大発揮濃度は発現誘導因子HGF,FGF2のそれ(100-300pM)の1-2桁低いこと、また、HGF,FGF2にTGF-β2,3を共添加するとSema3A発現は完全にキャンセルされたことから、TGF-β2,3がSema3A発現の強力な抑制因子として機能していることが示唆された。さらに、ラットの後肢下腿部の筋を圧迫損傷させて筋再生を誘導する生体モデルを作製し、経時的に回収した再生筋の細胞外液液をwestern blottingに供試したところ、HGFとFGF2は筋損傷後の再生初期に、TGF-β3は再生後期に濃度が上昇することを観察した。以上の結果から、誘導因子(HGF,FGF2)と抑制因子(TGF-β2)の濃度が上昇する時期の違い(タイムラグ)によってSema3Aの発現が巧みに制御されているという「増殖因子濃度依存的な時系列制御機構」が予想された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画は概ね実施することができた。研究成果を関連学会などで発表・講演した他、分子生理学の分野で著名なAm.J.Physiol.Cell Physiol.に掲載された。また本論文はGlobal Medical DiscoveryのKey Scientific Articlesに選定された(2012年の3月)。「衛星細胞特異的Sema3Aノックアウトマウスの作出および表現型解析」は必要経費(主に海外からの移送・導入経費)が高額なためH23年度に実施出来なかった。必要なTGマウス2種が国内に存在することを知り、安価に本年4月中旬に移送・導入する手はずを整えた。必要な実験手法は国立遺伝研究所から導入した。従って、これらを交配し目的のコンディショナルKOマウスを作出する準備は整った。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更点あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。H24年度の実施項目の中で「衛星細胞特異的Sema3Aノックアウトマウスの作出および表現型解析」が最も重要であり、インパクトのある成果が期待できる。衛星細胞由来の神経軸索ガイダンス因子の重要性を直接的に観察することができるからである。タモキシフェンの経口投与により遺伝子の不活化を誘導するという最先端のコンディショナルKO技術を用いるが、不活化がうまく進まない場合があるとも聞いている。この点に関しても国立遺伝研究所および川崎医科大学の関連研究者に指導して頂くなど、実施準備状況は概ね整っている。研究代表者の研究室の分担研究者1名および博士後期課程大学院生2名の協力を得て、優先的に遂行する予定である。
|
Research Products
(16 results)