2010 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類成長途上卵の有効利用を目指した発生能獲得の分子メカニズム解明に関する研究
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22380147
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内藤 邦彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20188858)
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Keywords | 哺乳類卵 / 成長途上卵 / cAMP依存性キナーゼ(PKA) / Wee1B / AKAP |
Research Abstract |
本研究では哺乳類の成長途上卵が発生能を持たない原因を分子レベルで解析することを目的とする。予備実験により成長途上卵ではMPFを抑制的にリン酸化するキナーゼWee1Bが恒常的に活性化していることが示唆されていた。Wee1BはcAMP依存性キナーゼ(PKA)によって活性化される。そこで本年度はまずPKA活性を制御するcAMP濃度をブタ成長卵と成長途上卵で測定した。その結果、発生条件では成長途上卵でも成長卵と同様にcAMP濃度は低下することが示された。成長途上卵ではcAMP非依存的にPKA活性が維持されている可能性を調べるため、ブタ卵のPKA構成因子である制御サブユニットI(PKA-RI)とII(PKA-RII)および触媒サブユニット(PKA-C)をクローニングし、PKA-Rが持つ自己リン酸化サイト(15アミノ酸残基)のGST融合タンパク質を作製し、それを基質として^<32>P-ATPを用いてPKA活性を測定した。その結果、予想通り成長途上卵ではPKA活性は維持されていた。そこで成長途上卵にPKA-CのアンチセンスRNA注入による発現抑制やPKI注入によりPKA活性を低下させたところ減数分裂が再開した。よってPKA活性が維持されることが発生能を持たない原因であることが確定した。PKA活性維持の原因がPKA-Rの不足によると考え、RIまたはRIIの強制発現を行った結果、RIIの過剰発現はdbcAMPで減数分裂再開を抑制した成長卵に減数分裂を誘起したが、成長途上卵では予想に反しRI、RIIどちらの過剰発現によっても減数分裂を再開させることはできなかった。したがってブタ成長途上卵のPKA活性が維持され続ける原因はPKA-Cの発現量に対する単純なPKA-Rの不足では説明できない。そこでPKAの局在を調べたところ、成長卵では発生開始直前に細胞質から核内へ以降するのに対し、成長途上卵では細胞質に留まることが明らかとなった。この原因がPKA-Rのアンカー因子であるAKAPの相違による可能性を現在検討中である。
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Research Products
(10 results)