2011 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類成長途上卵の有効利用を目指した発生能獲得の分子メカニズム解明に関する研究
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22380147
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内藤 邦彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20188858)
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Keywords | 哺乳類卵 / 成長途上卵 / cAM依存性キナーゼ(PKA) / AKAP |
Research Abstract |
本研究では哺乳類の成長途上卵(GO)が発生能を持たない原因を分子レベルで解析することを目的とする。昨年までの研究により、GOはcAP依存性キナーゼ(PKA)活性が高値に維持されることが発生能を持たない原因であること、PKA構成因子である制御サブユニットI(PKA-RI)とII(PKA-RII)および触媒サブユニット(PKA-C)をクローニングし、このPKA活性の維持がPKA-Cに対する単純なPKA-Rの量的な不足によるものでは無いこと、またこれらの局在が成長卵とGOでは異なることも明らかにした。そこで本年度は、これらの細胞内局在の相違が発生能の相違の原因と考え研究を進めた。まず、この局在の相違が成長卵のみに起こる減数分裂再開の結果ではないことを核膜崩壊を抑制した卵を用いて確かめ、局在変化が減数分裂誘起の原因として働いている可能性を確認した。そこでPKA-RIIに核内移行シグナルを付加しGOの核内に強制的に移行させることを試みた。この変異は他のタンパク質では核内移行に有効であるが、残念ながらPKA-RIIを核内へ移行させることはできず、この原因はPKA-Rの局在を制御するAキナーゼ足場タンパク質(AKAP)が強力にPKA-Rと結合しているためと考えられた。そこでPKA-RIIのAKAP結合配列に変異を導入した結果、核内への移行へは成功した。したがってAKAPの相違が成長卵とGOのPKA-RII局在の相違の原因であることが示唆された。しかし、この部位の変異はPKA-Rの機能自体を損なうことが明らかとなりGOに減数分裂をおこさせることはできなかった。そこでAKAPの方向から解析することとし、ブタ卵のAKAPを検出するためのファーウエスタンブロット法を開発した。これによりブタ卵に複数のAKAP発現を検出し、その一部は成長卵とGOで藷現量が相違することも確認した。またデータベースよりブタのAKAP配列を検索しRT-PCRによりブタ卵には少なくとも6種類のA猷Pが発現していることを明らかにした。現在これらの遺伝子のクローニングを行っており、AKAP1は既に終了し、この発現を抑制すると減数分裂が阻害されることを明らかにした。しかし、GOに過剰発現させ減数分裂を誘起させることには未だ成功していない。他のAKAPについてもクローニングが終了しだい、発現を人為的に変化させPKA-Rの局在変化と減数分裂の関連を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブタ成長途上卵の発生能をもたない原因がPKA活性の維持にあることを明らかとし、その活性維樽の原因がPKAの局在の相違である可能性を示唆した点でおおむね順調と考えている。局在を人為的に変化させる手法でやや手間取ったが、AKAPの検出に成功しこの遺伝子をクローニングすることで局在を変化させられると考えられ、実験の方向は定まった。
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Strategy for Future Research Activity |
RT-PCRによりブタ卵での存在を礁認した6種類のAKAPについては現在遺伝子をクローニング中である。全てをクローニングした時点で、これらの遺伝子について人為的に発現量を変化させい、その際のPKAの局在の変化と減数分裂再開への影響を検討していく予定である。最終次年度となる次年度中には、十分これらの結果が出ると予想され、哺乳類の成長途上卵が減数分裂を再会できない原因を分子レベルで明らかにできると期待している。
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Research Products
(9 results)