Research Abstract |
哺乳類の卵巣の機能は胎生と関連した複雑な機能群で構成されており,その中には「卵子形成機能」と相反する機能も含まれると考えられる。本研究は,卵母細胞の体外培養技術を用いて,卵巣内の複雑な機能群を解体し,卵子形成に必須な機能を抽出し,再構築することを目的とした。材料としては,ウシおよびブタの卵巣を用い,1)原始卵胞~二次卵胞(発育初期),2)二次卵胞~初期胞状卵胞(発育中期)および3)初期胞状卵胞以降(発育後期)の3段階に分けて研究を開始した。 1)発育初期:ブタおよびウシ原始卵胞内の卵母細胞(直径30μm)の発育開始を制御する分子機構について調べた。ウシ原始卵胞内の卵母細胞の発育開始は,ブタの原始卵胞と同様に,転写因子FOXO3によって抑制的に制御されることがウシFOXO3のsiRNA干渉実験によって示された。また,テストステロン処理によって,ブタ原始卵胞が発達を開始することが示唆された。 2)発育中期:ウシの二次卵胞内の卵母細胞(直径50~60μm)を種々の方法で培養したところ,二次卵胞から取り出した卵母細胞-顆粒膜細胞複合体を培養する方法に比べて,二次卵胞を丸ごとコラーベンゲルに包埋し,血漿を添加した培養液中で培養すると,卵母細胞の生存率は高率に維持され,4週間後に卵母細胞は直径90~100μmへと発育した。 3)発育後期:高濃度のポリビニルピロリドンを含む培養液を用いた開放型培養法を用いて,ウシの初期胞状卵胞より採取した卵母細胞(直径90~100μm)-顆粒膜細胞複合体を2週間培養した。卵母細胞の発育培養には,複合体の下面からも培養液が到達するタイプの培養基質が有効であり,培養液にステロイドホルモンを添加すると高率に卵母細胞が生存し発育すること,また,アンドロステンジオンを添加すると50%以上の卵母細胞が成熟能力を獲得すること,が示唆された。
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