2011 Fiscal Year Annual Research Report
共生微生物によるベクター媒介性病原体応答制御の分子機構
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22380155
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
福本 晋也 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 准教授 (50376422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 正徳 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (00205303)
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Keywords | マラリア / セラチア / ハマダラカ |
Research Abstract |
本研究は節足動物媒介性感染症の病原体とベクターに着目し、ベクターとその体内における共生微生物、病原体の三者間の相互作用を包括的に解明しようとするものである。蚊・ダニなどに代表されるベクターの中腸は病原体の最初の侵入門戸であり、その内部環境は感染の成立に対して重要な影響を与えるものと推測される。ベクター中腸内における生物学的環境の主要構成因子として、腸内細菌叢が知られている。本研究では、腸内細菌叢と病原体の間には何らかの生物学的関係が存在するものと仮説を立て、病原体伝播成立における媒介ベクターの腸内細菌の意義を明らかにすることを目的としている。申請者らのこれまでの研究から、セラチアHB3株によってハマダラカ中腸の自然免疫経路が活性化され、マラリア原虫の分化・増殖の抑制が起きていることが推測され、感染の成立に対する腸内細菌の関与が示唆された。この仮説の検証を中心として、各種節足動物媒介感染症の、病原体伝播におけるベクター腸内細菌の意義を明らかにするため以下のように研究を実施した。 1.新規セラチア株の遺伝学的スクリーニングとマラリア原虫抑制効果解析 マラリア汚染地域のベクター蚊よりセラチア株分離を行い、FLHDCによって制御される性質の一つである細胞形態の多様性とマラリア抑制能力との相関関係を解析した結果、野生株においても細胞多様性とマラリア抑制効果に強い相関関係があることを明らかにした。 2.セラチア由来のハマダラカ抗マラリア原虫応答誘導ファクターの同定と機能解析 ベクター蚊の自然免疫系に着目し、IMD欠損ハマダラカの作製をおこなった。この変異体ハマダラカを用いて、セラチア由来LPS・鞭毛による自然免疫の誘導を解析したが、これらの経路による抗マラリア原虫効果は確認されなかった。したがって、自然免疫の誘導以外によるマラリア原虫抑制メカニズムの存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の年次計画通りに研究が実施され、期待と同程度の研究結果が順調に得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
マラリア汚染地域におけるハマダラカ腸内細菌とマラリア原虫保有率の比較解析 マラリア原虫の保有率と腸内細菌叢の機能相関について、熱帯熱マラリア汚染地域である、西アフリカ・ブルキナファソ国における分離サンプルを用いて比較解析を行う。当該国の調査地域では、乾燥地帯に点在する形で集落が形成されている。各集落間において、ハマダラカのマラリア原虫保有率と感染者発生率に著しい差異が存在することが、サグノン博士らの調査によって明らかになっている。マラリア発生率が高い集落、低い集落をそれぞれ、数集落ずつ選定し、ハマダラカのサンプリングを実施する。顕微鏡観察による形態解析、生化学的性状解析等によって腸内細菌の分離・同定を行い、マラリア発生率と腸内細菌種の比較解析を行う。
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