2011 Fiscal Year Annual Research Report
巨大核出現メカニズムを起点としたin vivo短期発がん指標分子の探索研究
Project/Area Number |
22380163
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
渋谷 淳 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (20311392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三森 国敏 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (10239296)
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Keywords | 発がん性評価 / 発がん性短期予測 / 巨大核 / 細胞増殖活性 / 細胞周期 / アポトーシス |
Research Abstract |
化学物質の発がん性評価手法であるゲッ歯類を用いた発がん性試験は、長期間に亘り、コスト、評価の効率性や動物愛護の面で課題が大きく、短期間で発がん性を予測出来る評価系の確立が求められている。一方、発がん物質の投与早期よりしばしば出現する異常な巨大核は細胞周期異常を介した発がん機序への関与が示唆されている。前年度に引き続き当該年度において、発がん性短期予測指標の検出を目的に、巨大核の出現が知られている腎臓をモデルとした発がん物質のラット28日間短期投与実験を行った。巨大核好発の発がん部位である髄質外帯を対象とした巨大核誘発腎発がん物質のマイクロアレイ解析より発現上昇した細胞周期関連遺伝子群と、投与早期で既に変動が報告されている分子群を基に免疫組織学的染色可能な分子群の選別を行った。その結果、細胞増殖指標のKi-67、Mcm3、G2/M期に機能するTopoisomerase IIα(Topo IIα)、Ubiquitin D(Ubd)、アポトーシス指標であるTUNEL陽性細胞が、巨大核誘発性を問わず腎発がん物質に増加することが明らかとなった。さらに異なる発がん標的に対する検出性を明らかにするため、肝臓、甲状腺、膀胱、前胃、腺胃、大腸を標的とした発がん物質の28日間投与実験を実施し、腎臓と同様にその反応性を検討した。その結果、肝臓の1物質及び大腸の発がん物質を除いた全ての臓器の発がん物質が高い増殖活性を示し、これらの発がん物質では残るTopo IIα、Ubd、TUNEL陽性細胞も腎臓と同様の増加が認められた。以上のことより、発がん物質投与早期における細胞増殖活性の亢進がG2/M期及びアポトーシスの異常亢進を同時に誘発することが示唆された。さらに、当該年度で得られたこれらの分子群は、28日間投与で高い増殖活性を示す発がん物質に共通した発がん性短期予測指標候補となり得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、腎発がん性短期予測指標候補分子群を抽出し、腎臓以外の複数の標的臓器を対象とした反応性の検討より、これら分子群が臓器を問わず広く発がん性短期予測指標候補となり得る可能性を見出した。また、発がん過程早期への関与を探索すべくラット二段階発がんモデルの実験を実施し、次年度の計画に該当するメチレーション解析についても開始しているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度で得られた発がん性短期予測指標候補分子群の発がん過程早期への関与を探るため、肝臓、甲状腺、膀胱、胃を標的としたラット二段階発がんモデルを用い、当該年度と同様の手法でその反応性を検討する。さらに、発がん性短期予測指標候補分子群の変動が、発がん物質投与により継代的に受け継がれていく形質であるか検討する目的で、主要なエピジェネティック制御系であるグノムのメチル化の関与について、メチレーションアレイ解析及びPCR解析によるゲノムのCpGアイランドのメチル化の度合いを検討する。
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