2011 Fiscal Year Annual Research Report
高病原性鳥インフルエンザウイルスに対する陸生野鳥の感受性と伝播に関する研究
Project/Area Number |
22380167
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊藤 壽啓 鳥取大学, 農学部, 教授 (00176348)
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Keywords | インフルエンザウイルス / 陸生野鳥 / 感受性 / 伝播 / 病原性 |
Research Abstract |
高病原性鳥インフルエンザウイルスの伝播に果たす野鳥や野生生物の役割を言及した基礎データは依然として国内外ともに不足している。大陸から国内への野鳥の飛来を止めることは不可能であり、ウイルスがそれによって運搬される可能性が否定できない以上、どのような経路でウイルスが侵入するのかを予測して、それに備えることが本病の発生を防ぐ重要な方策の一つである。 そこで本研究では以下の3項目で各々実験成績を得ることを目的として企画された。 1)大陸特に朝鮮半島を経由して我が国に飛来する野鳥あるいは鶏舎内に直接侵入する種を野外調査により特定する。2)候補となる野鳥の高病原性鳥インフルエンザウイルスに対する感受性およびウイルス伝搬者としての可能性を感染実験により評価する。3)ウイルスの鶏舎内侵入経路としての留鳥あるいは野生動物へのウイルス伝播の可能性を感染実験により評価する。 これらの目的達成のために、今年度得られた成果は以下の通りである。 1)感染アヒルの糞便(1g当たり約10の6乗個のH5N1ウイルスを含む)を飼育ケージ内へ投入し、そこでドバトを10日間飼育したが、感染は成立しなかった。 2)感染アヒルの糞便で汚染された飲み水(1ml当たり約10の5乗個のウイルスを含む)をスズメに与えた場合、用いた2羽とも死亡した。 3)スズメから鶏への同居感染が成立するか否かについてケージ内に衝立てを設置した飼育ボックスを用いて実験した結果、鶏への感染は成立しなかった。 4)スズメに対する感受性に相違のあるクマタカ株とオオハクチョウ株のHA遺伝子を比較した結果、少なく33個のアミノ酸の相違が認められた。その中にはレセプター結合部位近傍のアミノ酸も含まれていた。 来年度は引き続き、侵入ルートの実証実験を継続するとともにウイルス株間の感受性の相違に関わるアミノ酸についてもさらに詳細に解析を進める計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2010年~2011年にかけて、日本国内においてH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスによる家きん及び野鳥での流行が多発し、特に感染野鳥の診断が優先され、それに申請者が所属する鳥取大学鳥由来人獣共通感染症疫学研究センターのP3実験施設が使われたために、本研究で同施設を使わなければならない感染実験の実施がやや遅れているが、それ以外は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に引き続き、陸生野鳥(留鳥)を捕獲あるいは代替種(人工飼育類似種)を入手し、感染実験によって、致死率、感染率、症状、ウイルス排泄量、ウイルス排泄期間、各臓器ウイルス価を明らかにする作業を継続する。また、実施がやや遅れている感染実験すなわち想定されるいくつかの鶏舎内ウイルス侵入ルート(野生水禽類の糞便や汚染された環境水や飼料、感染野鳥の死体など)を検証するための実験に関しては、時間的に野鳥を捕獲しての実施が困難な場合は同様の感受性を有することを確認した上で代替種(飼育鳥)を用いて実施するよう計画を変更したい。 平成24年度は最終年度であるため、これまでに得られた成績を総括し、留鳥による鶏舎内へのウイルス伝播の可能性を評価することで、今後の高病原性鳥インフルエンザの国内発生予防対策確立のための一助としたい。
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Research Products
(7 results)