2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質に存在する無益回路に着目したザゼンソウ温度センサーに関する研究
Project/Area Number |
22380184
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
伊藤 菊一 岩手大学, 農学部, 教授 (50232434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 洋 岩手大学, 工学部, 教授 (10261463)
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Keywords | 生体分子 / 蛋白質 / 酵素 / 植物 / 無益回路 |
Research Abstract |
ザゼンソウ(座禅草)は早春に花を咲かせるサトイモ科の発熱植物である。本植物の発熱は、肉穂花序と呼ばれる特異器官で観察されるが、興味深いことに、肉穂花序の温度は、氷点下を含む外気温の変動にも関わらず、発熱により、その体温を20℃内外に維持することが明らかになっている。寒冷環境において"恒温性"を有する植物はこれまでザゼンソウ以外には見出されていない。本研究の目的は、ザゼンソウの恒温性を保証する"温度制御システム"に関わる分子群について、ミトコンドリアに存在するシアン耐性呼吸酵素(AOX:alternative oxidase)のみならず、細胞質に存在する"無益回路(futile cycle)"に着目し、その"温度センサー"としての機能を明らかにすることにある。 本年度は、国内のザゼンソウ群落地にて発熱中のザゼンソウより肉穂花序のサンプリングや温度測定などの実験を計画していたが、H23年3月に発生した東日本大震災の影響により、当該実験を予定通り行うことが困難な状況となった。研究室において保存されていた肉穂花序サンプルも震災に伴う停電の影響で本来の生物活性が保持されているか確定できない状況となり、研究の遅延が生じた。このような状況の下、保存状態が良かったザゼンソウ肉穂花序由来cDNAを用い、無益回路を構成する酵素群をコードする遺伝子の同定に成功した。得られた遺伝子群は、既にデータベースに登録されている当該遺伝子群と高い相同性を有していた。これらの結果は、次年度以降の無益回路に関するより詳細な解析の一助になる有益なものである。
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