2010 Fiscal Year Annual Research Report
発生・分化過程における哺乳類染色体の普遍的構築原理とその意義
Project/Area Number |
22380188
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
奥村 克純 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 教授 (30177183)
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Keywords | エピジェネティクス / クロマチン構造 / DNAのメチル化 / 5-aza-2'-deoxycytidine |
Research Abstract |
本年は初年度でもあり,研究推進の準備段階で,特にクロマチン構造の解析技術の整備,およびこれらを用いたクロマチン構造とエピジェネティクスの解析等,実験系や技術的基盤の確立を目指した研究を進めた。その中で以下の成果をあげた。 (1)マウスのセントロメア領域はminor satellite repeat(MiSat),major satellite repeat(MaSat)から構成され,高度にDNAがメチル化されている。DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤5-aza-2'-deoxycytidineを使って、メチル化を阻害した結果、MiSatとMaSatの転写が活性化され、DNAのメチル化レベルの減少がセントロメア領域のヘテロクロマチンの転写活性に関与していることがわかった。また、転写活性を持ったMaSatにはアセチル化ヒストンH4、ジメチル化またはトリメチル化H3K4といったユークロマチン様ヒストン修飾が増加していた。時空間的な解析により、ユークロマチン様ヒストン修飾の蓄積は処理後2回目のS期に生じ、MaSatの複製タイミングがS期中期や後期から初期に移行することと一致した。さらに転写活性ヒストンH3.3がユークロマチン様ヒストン修飾の蓄積よりも先行することを見出した。これらの結果は、DNAのメチル化は分化したマウスの細胞のセントロメア周辺ヘテロクロマチンの適切な編成に不可欠であることを示唆し,今後分化段階での検討を進める。 (2)DNMT1特異的siRNAやDNMT阻害剤で処理した細胞を用い、その詳細なメカニズムを解析した。DNMT1ノックダウン細胞ではγ-H2AX fociが形成され、S期核で顕著に増加したことから、複製依存的にDNA二本鎖切断が誘導されることが示唆された。さらに、DNMT1ノックダウン細胞では複製フォーク進行が減速することがわかった。DNMT阻害剤でも同様の結果が得られた。一方,UHRF1ノックダウンにより、DNMT1ノックダウンによるDNA損傷レベルが有意に減少し、同時に複製フォーク進行速度も有意に回復した。以上の結果から、受動的脱メチル化後のDNA損傷誘導には、ヘミメチル化DNAに無秩序に結合したUHRF1が関与すると考えられる。
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