2011 Fiscal Year Annual Research Report
光分解性リンカーを用いる血中循環腫瘍細胞の捕捉・回収法の開発
Project/Area Number |
22390005
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
青木 伸 東京理科大学, 薬学部, 教授 (00222472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 良 東京理科大学, 生命科学研究所, 教授 (20159453)
早瀬 仁則 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (70293058)
中面 哲也 国立がん研究センター東病院, 臨床開発センター, 機能再生室長 (30343354)
伊藤 雅昭 国立がん研究センター東病院, 臨床開発センター, 消化器科医長 (40312144)
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Keywords | 血中循環腫瘍細胞 / 光分解反応 / がん診断 / シリコン基板 / 抗体 |
Research Abstract |
血液中やリンパ液を循環しているがん細胞を、血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell、以下CTCと略)という。CTCおよびCTC由来の物質を検出することによって、がんを超早期に発見する試みが行われているが、実用的技術は発見されていない。悪性腫瘍は、もともとの原発巣周辺の正常な細胞や組織を破壊するだけでなく、血液やリンパ液にのって離れた臓器へ移行して新たな腫瘍を形成して「転移巣」を形成する。転移する前に腫瘍を切除できれば治癒は可能であるが、診断可能になるには1cmほどの大きさが必要であり、その中には約10億個のがん細胞が含まれているため、すでに他の場所に転移している可能性が高い。一般的に、悪性化が進んだがん細胞ほど転移しやすく、血液中のがん細胞(上記CTC)数も増えていると報告されている。 これまでに、シリコン基板と抗体を結合するためのリンカーを設計・合成した。まず光分解性をもたないリンカーを合成し、シリコン基板表面を抗体(抗EpCAM抗体)で修飾した。リンカー分子の左側にはシリコン基板へ結合するための(EtO)3Si基を、右側には抗体と結合するためのカルボキシル基を導入した。CTC trapの土台となるシリコン基板については、直系約100mmの微小柱をつくることに成功し、ほぼ恒常的に準備することができるようになったため、リンカーおよび抗体導入ができるようになった。この固相表面上の化学変化を、FT-IR/ATRや原子間力顕微鏡(AFM)などで確認した。 また、正常マウスの血液(主に赤血球)とがん細胞をまぜて、シリコン基板上に作成したマイクロ流路(抗体未修飾)内を流すことによって、これら二種類の細胞を分離し、がん細胞を1万倍程度濃縮することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進行している。光分解性リンカーで修飾したシリコン基板とマイクロ流路を、毎回ほぼ同じ性能で準備できるようになり、実験の再現性が確保できるようになった。また、シリコン基板表面上の化学変化や抗体修飾を、FT-IR/ATRや原子間力顕微鏡(AFM)などで間接的および直接的に観測することにも成功した。光反応による固相表面での抗体の解離を直接観察したのは、おそらく世界初であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度(平成24年度)は、当初の予定通り、がん細胞の、抗体で修飾したシリコン基板上での捕捉を試みる。具体的には、特定の抗原を発現した細胞を作成し、抗体で修飾したシリコン基板上へ固定する。その後、細胞がはがれるまで溶液相の流速を上げて、細胞上の抗原-抗体複合体の強さを測定する。 これまでの研究で、シリコン基板上への化学リンカーの固定に要する反応条件が明らかになってきたので、光分解性リンカーによる表面修飾、ならびに、細胞に対する障害が小さい長波長の光で分解できるリンカーの設計と合成も行う。蛍光灯下で分解できるリンカーの開発を目標とする。 さらに、血液中に存在する赤血球、白血球、血小板などからがん細胞を分離するためには、がん細胞の特徴をより詳しく調べる必要性が出てきた。これまでにがん細胞が正常細胞よりもサイズが大きく、変形していて、硬い、などの特徴が明らかになっている。そこで、上記のCTC trap作製と並行して、がん細胞の表面電位、原発巣の違いに基づく大きさや形、硬さの違い、抗体との相互作用などを調べ、その結果をCTC trapやリンカーの設計へフィードバックする予定である。
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Research Products
(35 results)