2011 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光性リン酸基結合タグ分子を用いたプロテインキナーゼ反応の解析法
Project/Area Number |
22390006
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小池 透 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (90186586)
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Keywords | シグナル伝達 / 蛍光分析 / プロテオミクス / タンパク質リン酸化 / キナーゼ / 磁気ビーズ |
Research Abstract |
本研究は,ナノモル濃度のリン酸化分子を選択的に捕捉できる蛍光発色団を有するオリジナルな分子(蛍光性フォスタグ)を用いた新しいリン酸化プロテオーム解析法の開発を目的としている。蛍光性フォスタグを用いた本手法は,従来のリン酸化分子の分析法(放射性同位体法,抗リン酸化抗体法,単核金属錯体法)と比較して,より網羅的かつ迅速なリン酸化反応解析を可能にし,簡便な操作性や安全性などの利点をもち,癌やアルツハイマーなど生体内リン酸化反応のバランス異常に起因する病態の治療薬や診断法の開発に役立つ革新的な分析技術である。本年度は,可視光領域に蛍光を発生するフォスタグとリン酸化基質ペプチド組み合わせたキナーゼ反応の検出法を開発した。さらに,磁気ビーズにフォスタグ分子結合させた新しい機能性分子を作成し,蛍光発色基をもつキナーゼ基質ペプチドを効率よく分離して定量する新しい手法を検討した。本磁気ビーズ法の開発では,水溶性スペーサーを結合した新規フォスタグの合成とその物性の検討を行った。その後,フルオレセイン蛍光色素を結合させたリン酸化基質とフォスタグとの結合および解離反応速度論を時間分解蛍光分析法で解析した。その結果,μmol濃度の稀薄な条件下においても,フォスタグ分子(磁気ビーズ結合型フォスタグや蛍光性フォスタグ)は数秒以内にリン酸化ペプチド基質を捕捉すること,さらに,リン酸緩衝液を用いた生理条件下で,数分以内にほぼ100%の基質を解離することも明らとなった。このフォスタグ分子の速度論的な特徴は,リン酸化ペプチド基質のリアルタイム検出に十分応用可能なものであり,今後様々なキナーゼ反応解析の実施例を作成していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した研究概要とほぼ同様に研究を進めることができている。科学的な研究の遅れはほとんどありませんが,新規蛍光性フォスタグを用いたリン酸化タンパク質の選択的染色の実施例数が少ないため,論文発表が少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究計画調書に記載した内容を着実に進めていくと同時に,この二年間で得られたフォスタグ分子の特性を用いた新規蛍光分析法を,本研究分野の世界標準研究技術となるよう論文や学会発表を通じて世界に公開していきたいと考えている。研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点はまったくありません。
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