2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22390018
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 俊秀 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 主任研究員 (60162004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石塚 玲子 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 専任研究員 (60342747)
阿部 充宏 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 研究員 (90415068)
村手 源英 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 協力研究員 (30311369)
牧野 麻美 独立行政法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 特別研究員 (20373368)
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Keywords | 脂質プローブ / 脂質ドメイン / 脂質ラフト / 脂質の非対称性 / 脂質の可視化 / スフィンゴミエリン / コレステロール / 超高解像顕微鏡 |
Research Abstract |
本年度は超高解像蛍光顕微鏡(Photoactivation localization microscopy,PALM)を用い、脂質ラフトの分布、動態、機能の解明を試みた。PALMで脂質ラフトを観察するために新しいスフィンゴミエリンプローブ、コレステロールプローブを開発し、細胞表面のコレステロールに富んだドメインとスフィンゴミエリンに富んだドメインとは異なることを明らかにした(Mizuno et al.)。さらに細胞分裂におけるスフィンゴミエリンドメインの分布と動態の解析から形質膜外層のスフィンゴミエリンドメインは内層のホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸に富むドメインの形成をコントロールしていることを示した。また細胞膜のコレステロールはスフィンゴミエリンドメインの維持に重要な役割を果たしていることも示された(Abe et al.)。 また細胞表面のコレステロールを可視化することで、コレステロールの合成、輸送を阻害する低分子化合物のハイスループットスクリーニングする系を確立し、新しいコレステロール合成阻害剤の同定に成功した(Ishitsuka et al.)。本年度はまたスフィンゴミエリンに富む脂質ドメインを認識するタンパク質、ライセニンを原子間力顕微鏡のチップに共有結合させたものをプローブとして用いることで、人工膜上のスフィンゴミエリンドメインの分布と物性の同時測定を行うことにも成功した(Wang et al.)。 本年度は脂質ラフトだけではなく、エンドソームの脂質ドメインを形成するビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)についても解析を行った(Tan et al.)。これまでBMPの立体構造は明らかにされていなかったが、今回この脂質のグリセロリン酸の立体配置はsn-1型であることが明らかになった。Sn-1型脂質はこれまで古細菌にのみ見出されており、今回の発見は動物細胞と古細菌に進化的な接点があることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は超分解能顕微鏡を用いることにより脂質ラフトの裏側を見ることに成功し、またハイスループットスクリーニングによるコレステロールの合成、輸送に影響を与える低分子化合物のアッセイ系の確立が出来た。また後期エンドソーム特異的脂質の特徴的な立体構造を決定することにも成功し、合計9編の論文を発表することが出来た。一方新規の脂質プローブや電子顕微鏡による脂質の分布の解析は実験はほとんど終わっているものの発表は間に合わなかった。今後これらの論文の作成を早急に進めると共に研究をさらに発展させて行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究課題の最終年度に当たる。現在新規脂質プローブの解析、電子顕微鏡による脂質の非対称分布の解析、脂肪滴の解析、モデル膜の解析等の実験が進行中であり、来年度中に発表したい。
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