2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22390025
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
武田 厚司 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (90145714)
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Keywords | 亜鉛 / 海馬 / 学習・記憶 / シナプス可塑性 / 長期増強 / グルタミン酸 |
Research Abstract |
生体にストレスが負荷されると、視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA)系機能が活性化され、副腎皮質からのグルココルチコイド分泌が増加する。HPA系機能は老化に伴い亢進するが、HPA系機能亢進とうつ病・認知症の症状あるいは海馬萎縮との間に相関性があることが知られている。ストレスはうつ病に加え認知症の増悪に関与すると指摘されており、高齢者の高罹患率にはストレスに対する脆弱性が関与するものと考えられる。老化による脳機能低下・障害ならびに行動変化は亜鉛欠乏食飼育時といくつか共通する現象がある。亜鉛は脳機能に不可欠な微量金属である。亜鉛欠乏食をマウス、ラットに与えると、血清グルココルチコイドレベルが上昇する。この上昇はシナプス亜鉛レベルが減少する前に観察される。血清グルココルチコイドレベルの上昇がストレス感受性を高め、うつ様行動などの精神症状様行動と関係する可能性がある。本研究では、亜鉛欠乏食ラットのうつ様行動にはシナプス亜鉛レベルの減少よりグルココルチコイド分泌増加を介した脳機能変化が関与していることが示唆された。加齢に伴いシナプス亜鉛レベルが減少する可能性があるが、老齢時のストレス脆弱性にはHPA系機能亢進が大きく関与していると考えられる。一方、シナプス亜鉛レベルが一過性に顕著に減少すると、記憶の細胞レベルでのメカニズムの一つと考えられている長期増強(LTP)は海馬で減弱し、海馬依存性の記憶が障害された。また、扁桃体は恐怖記憶と密接に関係するが、恐怖記憶の獲得と想起時にシナプス亜鉛をキレート化すると、恐怖記憶の想起時に竦み行動が増加した。シナプス亜鉛は海馬依存性の記憶とともに、扁桃体依存性の記憶にも関与すると考えられる。
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